数ある
本当に数多ある
大好き場面の一つ。
舞台袖から
ゆったりとピアノに向かい
ピアノに左手を置いて
客席に一礼。
このね…
ピアノに近づきながら
左手をスッと
高貴に差し出す姿に
先ずドキンとする。
解ってる…
私に向かって
手を差し出したりしてない。
でも
すっごく素敵な
燕尾服をお召し。
そして
少しも興奮などしてないように
ゆっくり一礼。
で、
この所作振る舞いが
どんな時にも
やんごとなく
慌てず冷静に動く
ぶうにゃんが…
スツールにドスンと
腰を下ろす。
その昔から
ピアノは良家の
子息女が遊ばすもので
一般庶民は
遠巻きに眺めるのが
精一杯。
その大層なお育ちで
あらせられる
ぶうにゃん殿が
尻餅をつくかの如く
腰掛けた。
そして
何事も無かったかのように
燕のしっぽを払う。
ここまでで
既に
さして大きくはなく
眼力の欠片も無い
我が眼は
キラキラと輝き
瞬きも忘れて
ピアノの麗人ぶうにゃんを
ただただ見つめる。
で、最初に戻る。
ピアノに手を差し伸べ
一礼して
定位置に座する
華やかにして
冷静なぶうにゃんに
ため息を吐く。
これを3回繰り返してから
本題であるところの
ワルツを堪能する。
こんな
取るに足らない
ルーティンが
幾つもある。
定年の無い
自営業を畳み
1日24時間を
贅沢に使えるようになったら
3回繰り返すルーティンを
5回に増やそうか…と
思案に暮れている。
そうそう
おやつも
増やさねばならない。
やはり
今は働くしかないか。

