コンクールのポロネーズは
左側からテレビの撮影を
しているので
私が愛してやまない左手が
事の他美しく見える。
鋼のように強く
竹のようしなやかだ。
他の人間と同じ
10本の指しかないのに
生み出す音は
鮮やかに舞い踊って
落ちてくる。
両手では掬いきれない程の
質と量の『音』が
様々なスピードと
多彩な色と
思い思いの大きさで
ステージから客席に
こぼれ落ちてくる。
ぶうにゃんは
魔法使いみたいだ。
あの
綺麗な指を
ドラマティックに動かして
見えないはずの音を
感じさせてくれる。
会場の入り口で
ぶうにゃんの名前を見ただけで
既に魔法にかかっているのかな。
自分のお席に座って
舞台のピアノを見るだけで
胸がいっぱいになる
あの感覚は
やはり夢か魔法なんだろう。
ぶうにゃんの
黒いお洋服が
魔法使いのマントに見える。
今はお誂えに
ステッキをお持ちだ。
来年
また
ぶうにゃんの魔法にかかるのが
楽しみでならない。
ぶうにゃんは
魔法の腕を磨くのではなく
ピアノと向き合っているのに。
