白くて
大きくて
しなやかな手で
口を覆うぶうにゃん。
あら、やだ、奥様…風。
何故この人は
こういうことを
しらっと
自然にやってしまうのだろう。
そこら辺のお兄ちゃんなら
思わず舌打ちしながら
あり得ん!と胸の中で叫ぶ。
然し乍ら
このぶうにゃんという人は
いとも自然になさる。
やんごとないのだ。
所作が雅なのだ。
なんでもアリなのだ。
ただよく見ると
顔色が高級和紙のように白い。
たとう紙というか
お懐紙というか
あまり体調が優れなかったのではと
今更ながら思う。
プロたるもの
公演に言い訳は禁物なれど
人気絶頂のピアニストだから
スケジュールもキツかったろうな。
二十歳直前のぶうにゃん
この頃本当に望んでいたものの
幾つかは
手にできたかな。
青くて、
爽やかで、
頼りなくて、
真っ直ぐで、
頑なな若者が一人
ピアノの前で闘っている。
