東京ライブ



とやま御大が

指揮棒を振り下ろすタイミングを

待っている。


御大は

ぶうにゃんのタイミングを

測っている…。



ぶうにゃんは

興奮した風もなく

平常心のまま

ピアノの前に座している。



徐に

ウンウンと2度頷いてから

総てが動き出す。



このウンウンも好き。



白い蝶ネクタイが

眩しいくらい輝いて見える。



汗びっしょりだろうな。



ピアノって全身運動なんだな。



ぶうにゃんは

痩せ型の体型なのに

あの!コンクールの激闘で

9キロもの体重を

ワルシャワに置いてきたそうだ。


体力だけでなく

気力も使い果たしたんだね。



そう思うと

あの『うん うん』は

マラソンや水泳の

スタートの瞬間なのかと思う。




私が大好きな

『牧童』



さあ!と思った瞬間

客席の何かが

気になったらしく

振り下ろそうとした手を

止める。

確かに客席から

音がする。


そして客席をチラリと

見るのだけれど

いつも

最初の一音を出す時は

緊張感でいっぱいなんだなと

思う。



最初の一音を

奏で始める瞬間…

かなり好きな私です。



舞台の上の音楽家も

客席の沢山の目と耳も

音響や照明のスタッフさんも

関わる総ての人が

一様に緊張している。



クラッシックは…

音楽は…

生きているんだなあ

と、心から思う。