多分
レコードに入っている
曲目紹介の写真の一枚。

多分
初来日の、時だから
二十歳のぶうにゃん。

屈託なく
目尻を下げ
唇の両端を上げ
顎の窪み全開で
笑っている。

その昔
バレーボールの選手も
フィギュアスケートの選手も
勝っても負けても
ポーカーフェイスで
あまり笑顔は溢れなかった。


ぶうにゃんではない
ソ連のピアニストも
なんとなく固いお顔で
ピアノの前にいる。

でも
我等がぶうにゃん。 
コンクールの時にも
首を振ったり
片手を高く上げたり
時には
口元を綻ばせたりする。
なんなら
柔らかいお顔で
少し開いた唇から
ペロリと舌を出したりしてる。

もしかしたら
ソ連のピアニストは笑わないのだと
変な先入観を持っていた私は
あのニッコリ笑顔に 
バキュンと撃たれたのかもしれない。

容貌の美しさや
よく解らないながら
好き!と思ったピアノに
気がつく前に
あのキュートな笑顔に
惹かれたのかもしれないと
振り返って思う。

猫のワルツや
子犬のワルツは
柔らかい表情が
似合うもの。

その後で
綺麗で大きな手や
テクニックは解らないけど
とにかく『好き!』
と思った演奏に
心が傾いていったと
…そんな気がする。

今は
若者らしいこの笑顔ではなく
穏やかに微笑んでいるのかしら。

ちいさな
ちいさなファンは
貴方が今幸せであることと
あの頃と変わらない思いで
ピアノを奏でる日々であるよう
心から祈っています。