そうは見えないけど
弱冠19歳。

ただ、
私のように
ぼんやりと、のほほんと
お気楽ではなかっただろう
19歳。

演奏している姿や
イライラと控室を歩き回る
背高のっぽの姿
19歳のくせに
手慣れた手付きで
タバコをくゆらす姿。

どれもほんの僅か一月前まで
高校生だったとは思えない。

そりゃそうだ。
才能があるが故に
練習も想像を遥かに超えるものだったろう。

ノンポリが服を着て
原宿に集まる我が国だったら
ぶうにゃんはぶうにゃんに
なり得なかった。

あまりに
ストイックだからなのか 
22歳で生まれ育った場所から
居を移すことになるけれど
この19歳の頃には 
移住することも
日本で絶大な人気を得ることも
大和撫子と結婚し  
父親になることも
つゆ程も想像できなかったはず。

僅かに
19歳。


もう一度
戻りたいと思うことが
あるのだろか?

ぶうにゃんのことだから
例えそうでも
口にすることはないだろう。

19歳らしい青春を
スプーン一匙分だけ
味わう魔法をかけてあげたい。
そして、又
ピアノの前でこそ
自己表現できる
私が恋したぶうにゃんでいてほしい。


やっぱり
天才ピアニストとして
私の前に現れてほしいから。