6-10
鈴の触れたとしくんの手は、少しだけびくっとだけしたまま固まったように動かない。
鈴は今すぐに頭をなでて、抱きしめてもらいたかった。
会えずにいた時間を、埋めてもらいたくて仕方が無かったのだった。
鈴が、少しじれったい気持ちを感じてねだるように手を強くにぎると、としくんはうつむいたままの表情で黙っていた。
「としくん」
思わず声が出た。
じっと見つめる鈴の瞳だけが、まっすぐに彼のほほに突き刺さる。
「ねえ・・・」
そう呼ぶと、ようやく顔をあげた。
こっちを見ようとしない彼の表情がよく見えない。
鈴はよくわからなくなってきた。
どうしてか、何だかおかしい。
自分が彼に求めている気持ちが空まわっているのが分かる。
「としくん、どうしたの?」
鈴の少し強い口調だった。
そして、ゆっくりと口をあけた。
彼の言葉が部屋に響いて跳ね返ってくる。
「君、誰?」