今では、いろんなところで開催されているアール・ブリュット。首都圏では、2010年から開催している中野アール・ブリュットが先駆けといえるだろう。
中野アール・ブリュットの特徴は、社会福祉法人愛成会という単独の法人と、中野区の商店街が連携して開催しているところ。タイトルにあるNAKANO街中まるごと美術館という言葉が表しているとおり、商店街に根付いているので、期間中は街のいたるところにバナーやポスター展示が展開され、いくつかの店舗展示もあり、メインの作品展示があるという厚みが魅力だと思う。
社会福祉法人愛成会が単独と書いたが、実際は法人が力を入れてというより、今やこの分野の第一人者ともいえる小林瑞恵さんが長年取り組んできて、今があるといえるだろう。
説明はさておき、今年もメインの作品展示を観てきた。会場は今年も中野zero。
今年は10人の作家が出展していた。撮影不可の作品もあったので、可能なものからいくつかピックアップして写真を載せる。
一番圧倒されるのは、神山美智子さんの作品だ。滋賀のやまなみ工房に所属していて、いろいろなところで展示されているし、やまなみ工房は一度訪問したことがあるので、作品は何度も観ているのだが、やはり小さな人や動物の絵が集合体のように大きな絵画を構成するさまは、すごいなあと思う。
そして、小さな人や動物の一人一人がしっかり描かれているんだよね。愛を感じるな。
工房集の渡邉あやさんは、工房集の中でも、以前から好きな作家。
丸みを帯びた飛行機の姿がなんともいえない。
今回、初めて観た「飛行機 東京」では、ブラウンカラーの飛行機が新鮮だった。こういう自由で温かい色づかいも魅力に感じる。
飛行機に乗っていった修学旅行への思いからのモチーフらしいけれど、最近は旅行に行けてるのかな。
中武卓さんの作品では、この「タイサンボクの一枝」の力強い構図と色遣いが印象的だった。
アール・ブリュットでは、こういう力強い線や独特の構図・色遣いの作品を描く作家をよくみかける。一人ひとりの個性はあるんだけど、数を見ると似た特徴を備えたグループを構成している感じがする。
他にも、いくつかアール・ブリュットというか、障害者アートというかには、大きな類型があって、どのような障害なのかという共通項も感じる。
多分、関わっている多くの人が感じているんだろうけど、ここを研究している人ってまだ聞いたことないな。障害特性とアートをカテゴライズするなといった批判があるのかもしれないけれど、障害のあるなしに関わらず、表現だって時代や文化、背景、そして障害特性も影響して共通項ってあるし、研究があってもいいなと思うんだよね。
小林覚さんの「Let it be」は、気持ちが明るくしてくれる。
早川拓馬さんは、電車と人がモチーフ。
後藤拓也さんの作る「いえ」は、家への関心が溢れている。
紙をつなぎ合わせているのは、大量のホチキス。
古賀翔一さんは、漫画やアニメ、映画などが大好きだそう。
何重にも貼られた厚みを感じる造形。
そして、今回、小学校の児童たちが作成した音声ガイド付きで作品を鑑賞することができた。自分たちの言葉で吹き込んだ紹介や感想を聞きながら鑑賞するのは、さらに楽しい体験にしてくれた。素敵な取り組みだと思う。