こんにちは。

 

今日はウォールストリートジャーナルからの記事を紹介です。

 

ジョージ・フロイド事件のショックが収まらないうちに、アトランタで黒人が職務質問中に警官のテーザーガンを奪い、殺されるという事件が起こりました。アメリカでは警察に対する不信感がピークを迎えています。

 

とはいえ警察官のお仕事というのは命をかけたハードワーク。まじめに働いている警察官の方々は、警察という一つのくくりで批判をされて報われないことでしょう。

 

そんな警察側の視点から、警察のあり方を聞いているのがこちらの記事です。

NYPDの歴史上、最長で長官を勤めたレイ・ケリー氏(78)のインタビューの前半です。(昨日、ニューヨークで警官が逮捕時に首を絞めたとして事件となっていますが、このインタビューは記事は6月12日付けのものなのでその件に関しては触れられていません。)

 

ケリー氏は1992年から12年間、ブルームバーグ市長とディンキンス市長の時代にNYPDを運営し、2013年にリタイアしました。

 

ケリー氏はニューヨーク生まれで、ベトナム戦争に3年間従事したあと1966年に常勤としてNYPDに入ります。その当時ベトナム戦争反対運動のデモの警備をしましたが、それ以来このような規模のデモは見たことがないとのこと、それが50州で起こっているというのは驚くべきことだと言っています。

 

80年代、90年代のニューヨークの治安の悪さは有名でしたが、彼がNYPDのトップになりブルームバーグ元市長の後ろ盾も得て、11年後にはニューヨークの年間殺人事件数は半分以上(13,212件から5,849件)も減りました。

 

路上での職務質問(stop-and-frisk)は、彼の時代に有効な方法として使われた手法です。ですが2009年のニューヨーク市のデータでは、黒人やラテン系の人々が職務質問される人数が白人よりも9倍近く多く、人種差別との批判も出ています。

 

私は1993年に初めてアメリカを旅行しましたが、そのときにニューヨークにも立ち寄りました。ニューヨークに行く前に、腕時計をしていたら手首から切られて盗まれるからしないほうがいいとか、恐喝にあったら全額取られるので靴の底に20ドル札を隠していたほうがいいとか、友人からいろいろと恐ろしいアドバイスをもらいました。

 

実際にニューヨークに行ってみると、観光客で賑わっていてとても安全でした。警察官がコーナーごとに立っていて、その警備の多さにびっくりしたのを覚えています。

 

以下記事の要約

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A veteran’s View of American Policing

 

 

By Tunku Varadarajan on June 12, 2020 at The Wall Street Journal

 

◉ジョージ・フロイドの事件について:

 

ケリー:私が今まで見た警官の残忍な行為の中で最悪の行ないだ。故意に見えるからだ。(膝でフロイドの首を押さえつけながら)手はカジュアルにポケットに突っ込んでいた。こんなのは今まで見たことがない。反射的に行動して判断を間違えるということはよくあるが、これは当てはまらない。

 

(問題の警官は)乱心していたに違いない。他の警官が見ていながら、彼をなぜ止めなかったのかもわからない。動画を撮っている女性は『息ができない』と言っているフロイド氏から降りろと言っているが、なぜ彼はやめなかったのか。

 

彼の首を押さえつけている時間の長さから事件にすることができるだろう。(その殺人は)意図的だったと。

 

(ミネソタの弁護士キース・エリソンは当時件を第2級殺人に上げた。ミネソタの法律では、殺す意図があったことを検察側が証明しなければいけない。)

 

◉ケリー氏の在任中に起きた、似たような事件はどのようなものがあったか:

 

ケリー氏:2015年のノースチャールストンのウォルター・スコット事件で、50才の黒人男性が、車のテールライトが壊れているために警官に彼の車を止められた。スコット氏は車から降りて逃げ出した。そしてその警官は後ろから撃って殺した。

 

そばに居合わせた人が携帯電話でその様子を撮っていたが、その警官の言っていた「セルフディフェンス」とは違っていた。

 

携帯カメラが警察の職権乱用をモニタリングするのにどれほど重要か。そして警察も今ではカメラをつけている。素晴らしいと思う。(もし動画の証拠がなかったら)彼は殺人から逃れられていただろう。

 

◉携帯カメラのマイナス点について:

 

ケリー氏:私たちは携帯カメラ世代で誰もが賞を欲しい。多くの人にとって、警官の過剰反応はもってこいだ。動画は出来事の始まりを見せていないものが多い。(視聴者はその途中や最後だけを見るがそれは警官の)過剰反応や、セルフディフェンスや、逮捕のシーンだ。逮捕されたくない人たちにとって、クインズベリー公爵ルールは存在しない。

 

◉フロイドの死に平和的にプロテストしている人々について:

 

ケリー氏:まったく的を得ている。これは転機となる瞬間だ。だがニューヨークで何百人もの抗議者たちが警察官をあざけり扇動しているのを見てうろたえた。とても騒がしいが、警察がデモ隊の権利を守るために仕事をしているということは、誰も書いてはいない。

 

◉プロテストのメッセージについて:

 

ケリー氏:ビデオをみていると多くの人が『これは警官がいつもやっていることだ。もし携帯カメラがなければ、その警官は決して法定で裁かれなかった』と。だがそれは違う。このような行為はまったくの異常だ。だが『これが通常のスタンダードなやり方だ』と人々が思ってしまうのも理解できるし、彼らの指摘はこのようなやり方をやめてほしいということだ。

 

インタビューは、政治家からの厳しい批判についてや、警察の人種問題に対する解決法など続いていきます。

次回は後半をお届けします。