地下鉄は誰のものか | 溜池ではたらく不動産屋のブログ_Season 3

地下鉄は誰のものか

東京で生活していれば地下鉄を利用する機会は多々あります。僕も通勤で毎日銀座線を使っています。休日に出かけるときもメトロや都営地下鉄を使います。そんなときによく疑問に思うことがあります。たとえば、メトロから都営に乗り継ぐときに、『なんて不便なんだ!』と思う場面です。メトロを降りていったんエスカレータで上にあがって、そこから階段で下がって都営に乗り換えるとか。料金の面でも、メトロだけで乗っていくと安いけど遠回りになってしまうので、都営を乗り継ぐと早く着くけど割高だとか。さらに、いまどきスマートフォントが普及して急速にIT化が進んでいるのに、地下鉄ではほとんど使えないとか。(先日、ソウルに行ったときは地下鉄の中でみんなか携帯をいじっていました。大声で電話しているひともたくさんいました。電話は、ちょっとうるさいですが、メールをするくらいさせてもらいたいものです。)

そんな地下鉄を改革しようとしているのが、東京都の副知事、猪瀬直樹さんです。道路、水道そして今度は地下鉄に切り込んでいきます。前々から都営とメトロをくっつけたらどうか?という議論があって、でもそれは都営の過剰な債務をメトロにおっつけようとしているのだ!というような根拠のない解説がまかり通っている部分があると思いますが、この本はそれを真っ向から否定して、きちんと解説してくれます。

JRとか私鉄とか、基本的に地上を走っている電車のビジネスモデルは、線路を引いて周りを宅地開発して住民を増やして、どんどん沿線の土地の価値を高めていって、ターミナル駅の近くにはデパートつくったりホテルをつくったりしてさらに開発利益を得て、そして沿線の魅力度をさらに高めていくというものでしょう。たしかにJR東日本の山手線とか、JR東海の新幹線とか路線そのものがドル箱というのもあるのでしょうが、ルミネをやったりアトレをやったりとか、それ以外の収入が多く見込めます。

地下鉄は沿線開発をするわけにはいきません。ターミナル駅で何か作ったりはできるのでしょうが、やはり電車で稼ぐとういうモデルです。そして地下につくっているのでコストもたくさんかかります。でも運賃という安定収入があるので、債務は順調に減っていくモデルです。(メトロはマンション等を開発して不動産の運用もしています)都営地下鉄の債務も年間数百億円ベースで減っていっています。乗客数は順調に増えているようです。

日本の、そして東京の競争力を高めるためにも、効率化できる部分はどんどんやってもらって、便利にしていってもらいたいものです。メトロとか、都営とか、そんな利権にこだわっていたら、本当に日本は競争力を失って、世界から取り残されてしまいそうです。
地下鉄は誰のものか (ちくま新書)
猪瀬 直樹
筑摩書房
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