消滅する中国政府の「打ち出の小槌」
GDP拡大を支えた「土地財政」が終わる時
2023.09.25 | 10min
Text:田中 信彦
「どうして中国にはこんなにカネがあるのか」。
これは多くの人から受ける質問である。
その答えはひとつではないが、最も大きな理由は、国家そのものの仕組みの違い、中でも土地に関する制度の違いにある。
中国の土地は事実上、すべて国家のものである。つまり国や地方政府は、いわば全土の大地主であり、その土地の「使用権」を売ることで莫大な利益を上げてきた。
あらゆる権能を手にした「一党専政」の政府が自ら不動産デベロッパーになったのと同じで、儲からないはずがない。
いわば無尽蔵のカネが湧いてくる「打ち出の小槌」を手にしたようなものだ。
その利益で中国政府は立派な高速道路や鉄道網などのインフラを造り、それらをテコにもう一段、経済を成長させ、さらなる土地の値上がりが実現する。
そういうサイクルを実現し、成長してきたのが中国である。
しかし、
広い中国とはいえ、土地は詰まるところ有限である。
切り売りには必ず終わりが来る。
過去20数年、全国各地で都市化は急速に進展し、政府が高い価値を付けて売れる土地はもうあまり残っていない。
GDP押し上げの原動力になってきた「土地を中核にした、新たなおカネを生み出すサイクル」は消えつつある。
このことは中国という国が、これまでの成長の仕組みを変えざるを得ない段階に来たことを示している。
いかに痛みを少なく、成長の方式を変えるかが課題だ。
あゝ無情・悲惨さんの極。