中国軍機が他国軍機に「プロ意識を欠く危険行為」を繰り返すとされるわけ #エキスパートトピ
高橋浩祐
米外交・安全保障専門誌「ディプロマット」東京特派員
2025年6月8日に太平洋上の公海上空で海上自衛隊のP-3C哨戒機に異常接近した中国の戦闘機J-15(防衛省)
防衛省は12月7日、中国海軍の空母「遼寧」から発艦したJ–15戦闘機が沖縄本島南東の公海上空で、航空自衛隊のF–15戦闘機にレーダー照射したと発表し、「危険な行為」と非難した。
中国軍機による自衛隊機へのレーダー照射が公表されたのは今回が初めて。
中国軍機は、これまでも自衛隊機に限らず、米軍機、豪軍機、カナダ軍機、フィリピン軍機などに対しても「安全ではなく、非プロフェッショナル」とされる行為を繰り返し、各国から抗議を受けてきた。
それにしても、なぜ中国軍機は他国軍機に「プロ意識を欠く危険行為」を繰り返すのか。
ココがポイント
マールズ国防相は、中国軍機によるレーダー照射について、「大変憂慮すべき事態だと私達も思っている」と応じた。
出典:FNNプライムオンライン(フジテレビ系) 2025/12/7(日)
中国軍の戦闘機が自衛隊のF15戦闘機に対しレーダー照射を行ったことについて、中国軍の報道官は「事実と異なる」と反論
出典:TBS NEWS DIG Powered by JNN 2025/12/7(日)
「自衛隊機が海軍の訓練海空域に複数回接近して妨害し、中国側の飛行の安全を重大に脅かした」
出典:共同通信 2025/12/7(日)
航空自衛隊機にレーダーを照射した問題で、中国海軍は7日、「中傷をやめるよう日本側に求める」との談話を発表した。
出典:時事通信 2025/12/7(日)
エキスパートの補足・見解
中国海軍は7日に早速、「自衛隊機が海軍の訓練海空域に複数回接近して妨害し、中国側の飛行の安全を重大に脅かした」と反論した。
日中双方が自らの正当性を主張する中、軍事専門家の間では、中国軍機が他国軍機に「危険で非プロフェッショナル行為」を繰り返すとされる理由として次のような点がよく指摘されている。
まず、中国は、東シナ海や南シナ海、台湾海峡周辺などの国際法上の「公海」「国際空域」でも、自らの管轄権が及ぶとも受け取れる行為を続けている。
自国の「管轄海域」や「管轄空域」を広げようとする既成事実化だ。
2つ目に、米軍やその同盟国の哨戒活動を思いとどまらせるため、過度な対外威圧行動をとりがちなことだ。
3つ目に、中国軍内部の指揮統制の未成熟がある。
現場パイロットの裁量が大きすぎ、攻撃的な行動が評価される組織文化があると指摘されている。
偶発的な行動ではなく、制度的問題が背景にあるとの見方が根強い。
4つ目に、中国軍の国内向けの政治的な宣伝がある。
中国国内向けに「米軍機を追い払った」
「中国空軍が圧倒」といった宣伝に利用する例があった。
いずれにせよ、中国軍の危険行為は、予期せぬ衝突事故のリスクを高め、国際社会の不信を招いている。