「高市で行くから」 自民党総裁選の行方を決めた麻生太郎氏の”号令”
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「ばくちに勝ったな」
「党員や地方の声を受け止めましょうよ」。
自民党総裁選の国会議員投票が差し迫った4日午前、小泉進次郎農相を支持する中堅の電話が鳴った。
相手の高市早苗前経済安全保障担当相陣営の議員は、「党内世論」を重視するよう促した。
党員・党友票で優位に立つとみられていた高市氏への投票依頼だった。
(岩谷瞬、古川大二、平峰麻由) ■ 自民副総裁に麻生氏案 同じ頃。各地の党員・党友票で高市氏が小泉氏を大きく引き離しているとの情報が永田町を駆け巡る。高市陣営は「引き剥がし」の攻勢を強める。
林芳正官房長官を支援する議員も同様に揺さぶった。
決選投票が「高市-小泉」になれば、政権を共に支えた小泉氏と林氏の両陣営は連携するとの予測があったからだ。
昨秋の総裁選で高市氏を支援し、非主流派に沈んだ麻生太郎最高顧問も動く。
3日夜、票読みを重ねて高市氏に勝ち筋を見いだし、腹を決める。4日朝にかけ、投票先を決めかねていた派閥議員約10人に号令を出す。
「党員(票)に合わせろよ。
高市で行くから、言うなよ」。
決選へ向け“麻生票”を固めにかかった。
1年越しに雪辱を果たした麻生氏。
周辺はほくそ笑んだ。
「ばくちに勝ったな」
小泉氏、包囲網に失速
自民党総裁選後の両院議員総会で、候補者らと手を取り合う高市早苗新総裁(左から4人目)=4日午後3時13分、東京・永田町の党本部(撮影・柿森英典)
4日昼、党員・党友票で高市早苗前経済安全保障担当相の優勢は確定的となった。
国会議員投票の直前に集会を開いた小泉進次郎農相は声を張った。
「国民のためにひたむきに前向きに働く自民党をつくりあげよう」。党本部そばのビルの一室に集ったのは議員70人ほど。
「予想どおり」と陣営幹部は強がったが、出馬の記者会見時より目減り。切り崩しの影響は明らかだった。
前回総裁選の「失速」を糧に小泉氏は今回、ブレーンの木原誠二元官房副長官らが作った原稿を読む「安全運転」を徹底。
切れ味鋭い発信力も、改革志向の政策も影を潜めた。
「全く良さを出せなかった」(中堅)。陣営が小泉氏に有利な内容を呼びかける「やらせ投稿」も発覚し、勢いはそがれた。
「経験や見識の浅さが目立つ」。小泉氏支持から中盤で林芳正官房長官の支持に乗り換えたベテランは、見切りを付けた。