【解説】米露首脳会談で何が…プーチン大統領が突きつけた要求の全貌は
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米露首脳会談は共同記者会見でほとんど内容が語られず、ベールに包まれていた。しかし、トランプ氏が求めるウクライナでの即時停戦は実現せず、プーチン氏が主導権を握っていたのは確かだ。
プーチン氏は会談で、どのような要求を突きつけたのか。
その全体像が見えてきた。
■プーチン氏が突きつけた条件とは
ロイター通信は16日、「戦争終結に向けたプーチン大統領の提案」として、以下のような条件を報じた。
(1)ウクライナ東部ドンバス地方(ドネツク州・ルハンシク州)から、ウクライナ軍が完全撤退する。
それと引き換えに、ロシア軍は南部ヘルソン州とザポリージャ州で前線を凍結する。
また北東部スムイ州とハルキウ州で、ロシア軍が占領している小規模な地域を返還する用意がある。
(2)クリミア半島に関するロシアの主権の承認。
(3)ウクライナのNATO(=北大西洋条約機構)への非加盟。
ただし、別の形で安全保障の仕組みを持つことは可能。
(4)経済制裁の一部解除。
(5)ウクライナ全土または一部で、ロシア語の公用語化。
(6)ウクライナにおいてロシア正教会が自由に活動する権利。
■ドネツク州の撤退要求…ウクライナに突きつけられた重圧
米ニューヨーク・タイムズ(16日)によると、トランプ大統領は欧州の首脳らに対し、東部ドンバス地方全域をロシアに明け渡せば戦闘を停止するというプーチン氏の停戦案を支持する考えを伝えた。
プーチン大統領はその見返りとして、ウクライナの残りの地域での停戦と、ウクライナおよび欧州諸国への再侵攻を行わないと書面で約束するという。
ドンバス地方からの撤退は、ウクライナにとってどのような意味を持つのか。
現在ロシア軍は、ルハンシク州のほぼ全域を支配しているものの、ドネツク州の支配地域は7割にとどまっている。
ウクライナ軍は残り3割を「要塞化」して必死の抵抗で守っていて、これを引き渡すことは、簡単には受け入れられない条件だ。
米戦争研究所(16日)によると、仮に引き渡した場合、数十万人のウクライナの民間人がロシアの占領下に置かれる。
また、要塞地域を失うことで防御力が低下し、その後のロシア軍の再侵攻が容易になるとも指摘されている。
ドンバス地方からの撤退要求をめぐり、ゼレンスキー大統領は一貫して拒否する構えをみせている。
ロイター通信によると、17日には改めて、現在の戦線が交渉のスタートラインだと述べた。領土をめぐる駆け引きは、簡単には決着しそうにない。
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