ガザ全域の通信ほぼ遮断 孤立懸念
イスラエル・パレスチナ情勢
【エルサレム時事】イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザでは27日夜、イスラエルの地上作戦拡大を前に、電話やインターネットなどの通信が全域でほぼ遮断された。
ガザ地上戦でイスラエルが直面する過酷な「地下トンネル戦」とは?
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イスラエル軍を待ち受けるガザの地下トンネル網
ガザの地下トンネルの前で銃を構える「ハマス」軍事部門「カッサム旅団」の兵士 Photo: Yousef Masoud / SOPA Images / Getty Images
イスラエル国防軍がパレスチナ自治区のガザで地上戦を展開する場合、イスラム武装組織「ハマス」がガザの地下に構築した広大なトンネル網をどう攻略するかがカギになると識者たちは見ている。
【画像】ガザの地下トンネル内で「コーラン」を読むイスラム武装組織のメンバーら 英誌「エコノミスト」は、このトンネル網がどういうもので、その内部での戦闘がどんな様相を呈するのか解説している。
この地域に初めて密輸のためのトンネルが作られたのは、1981年、イスラエルとエジプトが国境を定めたあとのことだった。
アラブ系遊牧民のベドウィン族がエジプトとガザの双方からトンネルを掘ったという。 2001年に、やがてこの地区を占領することになるハマスが驚異的な地下トンネル網を作りはじめる。当初の目的は、エジプトから資材や武器を密輸するためだった。だが、トンネルにはほかにも多種多様な使い道があった。 指揮官らがそのなかに隠れ、イスラエルに盗聴されているガザの電話網に頼らずやりとりができた。
武器や弾薬の隠し場所にもなった。ガザでのイスラエルとの地上戦では奇襲攻撃のためにも使えた。
越境してイスラエルを急襲するのにも役立った。
こうした地下トンネルを発見するのは非常に難しく、発見できたにせよそれを空から破壊するのも難しい。
地下トンネル内では、極めて過酷な戦いが待ち受ける。無線の電波が届きにくいためコミュニケーションがとりづらい。完全な暗闇だと暗視ゴーグルも使えない。気温は地上より10度は低くて寒い。
どこで待ち伏せされているかわからないため、イスラエル国防軍はこれまでロボットに先導させる手法も使っているが、ロボットがトンネル内で引っかかって動けなくなることもある。
トンネル内で戦闘がはじまれば、爆音に包まれる。しっかりした訓練なしには戦えないのだという。
イスラエルの新兵器は通用するか
こうした事態を想定して、イスラエル国防軍は地下トンネルを再現した人工都市で訓練を積んでいるとされる。英紙「テレグラフ」によれば、イスラエル国防軍はこの地下トンネルを攻略するために「スポンジ爆弾」を使うだろうと報じている。 これは爆薬の入っていない化学爆弾で、プラスチック容器内で仕切られていた2種類の液体が融合すると発泡体が発生し、急速に固まり、すき間やトンネルの入り口を塞いで、ハマスの奇襲攻撃を防ぐというものだ。
ただしこの爆弾は危険物で、取り扱いを誤って視力を失ったイスラエル兵も複数いるという。 米紙「ワシントン・ポスト」は、ハマスに誘拐され、この地下トンネルに連れ込まれたとするイスラエル人の証言も紹介している。人質もそこに閉じ込められているとなれば、イスラエル国防軍の地下トンネル攻略はなおさら難しいものとならざるをえないだろう。