第3次世界大戦はすでに始まっている…ロシアへの経済制裁はアメリカにむしろマイナスに効き、ウクライナ戦争から抜け出せなくなっている
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『問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界』#1
2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻した日から今日まで続く、ウクライナ戦争。このままでは世界的な戦争に発展するのではないかという危惧もあるが、すでに第3次世界大戦は始まっているという…それはいったいどういうことなのか。 【図を見る】『問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界』より
フランス人人口学者のエマニュエル・トッド氏と、ジャーナリストの池上彰氏による対談本『問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界』より、一部抜粋・再構成してお届けする。
第3次世界対戦はもう始まっている
池上彰(以下、池上) トッドさんは22年から、ウクライナ戦争によって「第3次世界大戦はもう始まっている」ともおっしゃっています。どうしてそういうことが言えるのでしょうか。 エマニュエル・トッド(以下、トッド) ロシアとウクライナ2国間のこの戦争が、世界大戦に発展するのではと心配している人は多いと思います。でも、もうすでにアメリカを中心とする西側とロシアの間で展開されている世界戦争、という段階に入っていると見ています。 そしてそれは「まず経済面から始まった」とも言えると思います。 ウクライナへの爆撃で市民の多くが殺されていることはもちろん、まさに戦争という状態なのですが、ヨーロッパやアメリカがロシアという国を経済的に、最終的には社会的にもつぶすという目的で始めた経済制裁もまた、戦争の一端であるわけです。 この経済制裁に、ロシアは耐えています【図3】。その後ろには中国やインド、それからもしかしたらサウジアラビアなどの国がいるわけです。 そして、この対立、戦争が、こうしてヨーロッパの制裁が失敗することによってさらに広がっていった。つまり経済面で広がっていっているわけですね。そしてこの経済の問題というのは、今は西ヨーロッパのほうでも、その影響がひじょうに感じられるようになってきているわけです。 この「制裁のメカニズム」というのは、その本質からして、自然と広がっていくものなんです。それを広げるために、世界に対して、それぞれの国に立場を取ることを求めたりするのが制裁なんですね。そういう意味では、制裁の失敗というのは世界システムというものにとって、ひじょうに危険だったのではないかと思います。
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単なる説であり、今後の動向が問題だ。