「ワグネルの乱」で見えたプーチン政権の「弱さ」と「強さ」
配信
プーチン大統領、ワグネルの活動費について「全額国費」と主張
ロシアのプーチン大統領は現地6月27日、国防省の軍関係者との会合で、反乱を起こした民間軍事会社「ワグネル」に対して2022年5月~2023年5月までの約1年間、戦闘員の給与や報奨金として860億ルーブル(約1400億円)の国費を支払っていたことを明らかにした。使途に不正がなかったか調査する考えも示した。一部報道では、プーチン大統領はワグネルの資金の流れを明らかにすることでプリゴジン氏の評判を失墜させ、国内での影響力の排除を狙っていると報じられている。
プーチン体制の弱さと強さ ~ワグネルを掌握できず、格下のルカシェンコ氏に頼らざるを得なかった
が、飯田)一連の流れを見ると、プーチン体制が弱まっているのでしょうか? 合六)少し矛盾するようです私自身はプーチン体制の弱さと同時に、強さも垣間見た気がしています。 飯田)強さも。 合六)弱さについては、プーチン大統領は正規軍とワグネルのような組織を分割統治し、一方が台頭して自分の権力に挑戦しないようにしてきたわけです。しかし、結局は手に負えなくなってきた。 飯田)ワグネルに進軍させてしまった。 合六)混乱を収束させるにあたり、下に見ていた隣の国のルカシェンコ氏に頼らざるを得なかった点も、やはり弱さの1つだと思います。
体制にひびが入るもプーチン大統領への支持は変わらない ~権力を揺るがすような事態には当面つながらない
合六)他方で強さなのですが、ロシア軍、特にロシアのエリート層にプリゴジン氏の動きに呼応するような流れが、少なくとも表向きは広がらなかった。その点は興味深いと思います。 飯田)なるほど。 合六)ヨーロッパを見ても、数日間でこの乱によって名を落としたのはプリゴジン氏だけで、プーチン氏への支持は変わっていません。 飯田)そうなのですね。 合六)短期的にプーチン氏の権力に挑戦できる勢力がいなくなったということも鑑みれば、体制に錆やひびが入ったことは確かですが、直接、権力を揺るがすような事態には当面つながらないというのが、いまの率直な印象です。
次ページは:「反乱計画を事前にロシア側が知っていた」ことを報道したアメリカの狙い ~計画を認識していたとされるスロビキン氏が逮捕されたのではないかという情報も