「保津川下り」転覆事故 水難スペシャリストに聞く…舟がかじ失った原因は?ライフジャケット安全なのか?
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今回の保津川の事故原因として、「空舵(からかじ)」という言葉が聞かれました。かじを取る、舟の一番後ろにいる船頭が水をかくところで、空振りが起きたという話が、組合への取材で聞かれました。事故の原因や、舟の運航に伴う危険性について、水難事故の専門家、水難学会理事で明治国際医療大学教授の木村隆彦さんに伺いました。 【動画で見る】専門家解説 事故の原因は『空舵(からかじ)』か 「保津川下り」29人乗り舟が座礁 船頭1人死亡・1人不明 「バランス失い“落水”した」
出発から15分後「大高瀬」というポイントで、“空舵”という操船ミス
まず事故の概要を整理します。この舟には乗客25人と船頭4人が乗っていました。全員ライフジャケットを着用していました。 ・午前10時40分に出発。 ・そこから15分後、「大高瀬」という急流のポイントで、“空舵”という、“かじ”がふかされる操船ミスがあり、かじを握っていた船頭1人が落水しています。 ・ほかの船頭3人が舟を立て直そうと、さおなどで対応しましたが、舟が岩にぶつかり、乗客・船頭全員が落水しました。
【水難学会 木村隆彦さん】 「“空舵”についてですが、まず私はさおを突いたときに滑ったとか、さおの問題なのかと思いました。結果的にかじが効かず、操船がうまくいかなかったということでした。岩の間隙を縫って川を下っていくわけですから、(操船できずコントロールを失うと)岩にぶつかることが起こってくるというのがよく分かります」
前方に“さお”、中ほどに“オール”、最後方に“かじ” 複数の船頭で船をコントロール
組合の方に電話取材して詳細に分かったことを整理します。 ・舟の先頭にいる方が“さお”を持っていて、岩を突いてコントロールします。 ・それから“オール”を持っている方が、今回2人いました。通常は3名だそうですが、やや水位が高かったということで2人になりました。 ・最後方に“かじ”。7メートルぐらいの丸太のようなもので、先が水をかく形になっているということです。今回水面からかじが浮いて、空振りしてバランスを失ったと。この現象を「空舵(からかじ)」と呼ぶそうです。
【水難学会 木村隆彦さん】 「“かじ”は、先が基本的に水面下、水の中に棒が入っていまして、右へ左へ、舟を安定させながら動かす役割があります。水の中に入っていると、かじを持っている手に水の抵抗を感じているはずです。それが浮いて、かじが水面上に出てしまった場合、抵抗がなくなったかじが急に動いてしまうと思います。そうなったときに自分自身のバランスが崩れますから、落水しやすい状況になると思います」 かじが水に浸かって、圧力がかかるつもりで身を乗り出している人が空振りすると、勢い余って崩れてしまうのですね。 【水難学会 木村隆彦さん】 「そうです。かじが浮いて、水の抵抗がなくなって、急に軽くなるわけですから、(体が)突っ込んでしまうというのは、納得できるかと思います」
電車で保津川脇を下った事は有るが、舟ほど危険は感じなかった。