近くに東洋一の大刀洗飛行場が在った為、町は賑わっていた。
街の角に官区と呼ばれた場所があったが立ち入り禁止だった。
町には2組のヤクザ組織が存在していた。
終戦(敗戦)で警察は武装解除され進駐軍だと朝鮮人が大暴れ。
町内の高級料亭や飲み屋で、無銭飲食で大暴れ、
頼る組織が無いとヤクザに治安を頼んだ花柳界は、安堵したようだ。
程なくして、進駐軍が管区を占領し管区は憲兵隊の詰め所と成った。
MPが警備する憲兵隊には巨大に見える軍用犬がいた。
放し飼いの町内の犬達は竦んでしまい憲兵隊の前を通れなくなった。
しかし、筆者に対しては軍用犬達は,臭いを嗅いだだけで容認。
何の事は無い、管区時代から、裏の雑木林で蝉取りをしていた。
裏庭の彼方此方で立小便をした臭いを軍用犬は嗅いだのだろう。
おそらく先住者と認識、しかし夜は別…牙を剝きだして吠え掛かった。
憲兵が確認に来て事なきを得たが、夜の訪問はやめた。
憲兵は手招きしてチョコレートやガムをくれるが、父が厳しく止めた。
そんな折も折、歯の痛みに苦しんでいた憲兵の一人に、
マイファーザ…歯を指し示しドクターと言ったら、案内してくれと身振り手振りで魂願したので、自宅へ案内した。
歯科医だった父は吃驚したが、すぐに治療したようだ。
治療費を貰ったかどうかは判らないが、
その後、憲兵詰所の前を通るたびに憲兵の態度がガラリと変わった。
軍用犬の態度も変わったように見えた。
軍用犬の頭をなでる筆者を見て子供仲間もやくざ達も吃驚していた。
まだまだ長い話ですが、今日はここまで。