病院内での怪奇現象は当たり前のように流布されている。
この病院の消灯時間は夜9時である。
直腸癌で初めての入院となり、一人部屋を選んだ時、
消灯時間に看護師が部屋を訪れ、洗面所の電気をつけ室内灯は消した。
私は枕もとの電気をつけ、洗面所の電気も消してくださいと言った。
良いんですかと、不思議な顔をする。
おそらく怖くないのかと言いたかったのだと思う。
家でも電気は全て消して寝る習慣であり、日頃から闇は怖くない。
枕もとの電気だけとなった時から、気配は感じていた。
全て消灯したときそれは来た。
大勢に見下ろされている気配に少し緊張し、意識の中で自己紹介をする。
私は「よかもん明神」と名乗っている、○○だ。
今回直腸癌で入院した、宜しくと言った直後見下ろされている気配は消えた。
真夜中、2~3時間ごとに目覚めトイレに立ったが、
廊下の照明は消され非常灯だけの中を毎日数回トイレまで歩いた。
ペタペタと自分の歩く音だけが静寂の廊下で聞こえてくる。
一人部屋からは洗面所の明かりが漏れている、全て電気を消しているのは私の部屋だけのようであった。
部屋ではどこからか軋み音がする、隣室からは呻き声、隣の部屋では死者まで出た。
死者が出た部屋では、10日立っても終に次の患者が入ってこなかった。
病院には、死者が出た部屋には何日以内には新患者を入れないというりジンクスが有るのだろうか?
私が入っている部屋でも当然ながら過去に何人も死者は出ているはずである。
電気を点けて寝なければ怖いのは一般的な考え方であろう。
私は闇は闇として受け止めているので怖い事も無く良く眠れた。
部屋の闇を写せば沢山のオーブが写るのであろうが割愛した。
この世とあの世とは紙一重である、怖がるものは何もない。