「私はね、今まで努力と言うものをしたことがないんですよ」
ゴルフは100を切ったことがない、囲碁じゃ最初に9目置いてもみんなに勝てない。
いつぞやの碁会で竹さんを10分でやっつけて、別室でお茶を飲んでたら しみじみと話だしたから
”そうだよね、碁の本の一冊でも読んでりゃもうちょっとはマシな碁になるよな”
30歳も先輩だった竹さんに まわりのみんなもタメ口、まぜっかえしても
「戦争で生きて帰ってこれたから、あとはオマケの人生なんですよ」
戦争中は東京を防衛する高射砲部隊にいたけど、戦争末期になり撃つ玉がなくなってきて 皇居を守る肉弾攻撃隊に選ばれたんですよ。
選ばれた~~??ダレも見てねぇからな。
ウルサイッ!通称ニッコー隊、勇敢なヤツが行くんだ
じゃ、ますますアヤシイじゃない。
アメリカ軍が千葉の銚子に上陸し、上野を通り九段の坂を上がって皇居に攻めてくるのを想定して靖国通りのマンホールの中に隠れ 敵のM4戦車が来たら飛び出していって地雷を放り投げるんだ。地雷はね磁石になってるから戦車にくっついてドカンっというわけ。私が隠れていたマンホール、まだありますよ。靖国神社の鳥居の前を左にいったところ、今度、教えてあげようか? イラン・・・
あまりにヘボの竹さんが米寿の誕生日の囲碁会でみなで一計を案じ オレたちだけわざと負けて準優勝してもらった時には「君たちヘタになったね~」と満面の笑みを浮かべ 賞金袋を奥さんに見せるんだと大事そうにポケットに入れて帰ったな。
最初に知り合った頃はまだ若く、新橋のホテルの最上階ににあったバーのカウンターに座ると カルヴァドスをショットグラスでカポカポ空けながらバーテンダーをからかい、ゴルフ旅行に行けばクルマの中は竹さんの独壇場。
モグラをね、あの袋に入れてチンチンにかぶせるんですよ。そうすると中でカリカリカリカリもがいて そりゃぁいい気持ち。ウソかマコトか 小さな出版社を経営していた竹さんの話にみな大笑い。
酔っ払って渋谷の旅館に和服の女性としけこんだんですよ。一緒にお風呂に入ろうって 先に入ってると女性が入ってきて肩にモンモンが・・・コッチは酔ってるからタオルでゴシゴシこすったけど消えない。若いときのイタズラで・・・と聞いたときにャ 一瞬で酔いが冷めましたよ。
ガンを患ってからは酒を止たけど、細いちいちゃな身体で骨粗しょう症。ちょっと転べばすぐに骨を折って入院。
90歳過ぎて入院した時には皆でお見舞いに行き、入院見舞いの袋を見て 「まだ赤いね。今度は黒いのを頼みますよ」と言ってた翌年あっちに逝ったのは もう10年以上前の夏だったな。
「私はね、いままで努力というものをしたことがないんですよ」
昨日、竹さんが聞いたら 「ムダなことを」って言うんだろうなと思いながら 明日の有志会に備えて練習なぞしてみたけど・・・