山の日に尋ねていくには一番ふさわしい場所だろうと、ビーナスラインをひた走って信州八島湿原。
五、六年前に偶然出合ったこの石碑にあいさつをし、この湿原を一周するのにどのくらいかかるかと係り員の地元のじーさんに聞けば1時間半くらいです。前に来たときはイヌ連れでペット入園不可であきらめたところだ。
♪山には山の愁いあり 海には海の悲しみや・・・
あざみの歌を知ってる人も少なくなっただろう。
ニッコウキスゲもまだ咲いていた。
シシウドとタテハ蝶。
あっ、アサギマダラ!
この蝶が大好きなヨツバヒヨドリの花の蜜を熱心に吸って オイッ 飛べよ~。
フワリと空中滑降。
こんな黄色い花も好きなのか。
追いかけまわしてカシャリ。
湿原の周りに巡らされている木道の上もスイ~ッ。
急降下して 遊んでくれてる?
森を抜けると、草原を渡る風が気持ちよい。
湿原の一番奥まったところに 本御射山(もとみさやま)神社、平安時代から元禄年間まで続いた諏訪大社下社の祭祀のあとだそうで、境内には御柱が立っていた。
折り返し点を過ぎ、とにかく今日は明日の山登りに備えて夕方までに駒ヶ根のホテルに入ればいいんだから時間はたっぷりある。
なんだか最近好きになってきたシモツケソウ。
これなんだろと思ってたところに 胸に名札をつけた人が来て、これはナンと言う花か?と聞けば「キンミズヒキ」ああ、これがそうか・・・
キレイな小川が流れ、砂金はねェかとじっと目を凝らし・・・
天然記念物の前をヒラ~リ。
コオニユリ。
このまえプレバトで梅沢が 夏の空と秋の空が入り混じった「行き合いの空」で俳句を詠んでたが アレは季語じゃないんだってね~、まあいいけど。
この場所の湿原がハート型になってるから恋人の聖地?どこでも似た様なことを考えるんだな。
来たときに逢ったじーさんに じっくり堪能しましたと礼をいい、もらったパンフレットの端っこに載ってた毒沢鉱泉はどう行けば良いのか?と聞くと それはドクサワじゃなくてブスザワ 一旦下諏訪に降りてから行ったほうがわかりやすいと教えてもらったが 走ってる途中で偶然に看板をみつけて そっちの山道を登ってゆくと
とうせんぼ。やってない?しかしヨク見ると10時から、もう10時過ぎてるよな。トンガリコーンのヨコをすり抜けてクネクネ上がってゆけば
突き当たりに 旅館のような建物があり ここか。
神の湯。
なんでも不治の病だった人がこの鉱泉に浸かって直ったそうな。なんてったて毒沢だからな。
湯治客が長居するような感じの秘湯?
檜風呂にはダレもおらず アヤシイ色の湯で湿原一周の疲れを取り
諏訪大社のホンモノの御柱に手を合わせてから岡谷を抜け
これも以前に行ったことのある高ボッチ高原。この道は中山道なんだな。
高ボッチハイウエーと地図に記されてても ひでぇガタガタ道をスレ違いに苦労しながら8キロ上って着いところが 標高1665m の高ボッチ高原で さすがに涼しい。このヘンな名前は かのダイダラボッチが休憩したところだからと。
眼下に諏訪湖、そして正面の雲の下にヤヤあれは・・・ココロの澄んだ人には富士山のシルエットが見えるでしょう。夏のこんな時間に見えるなんて珍しいんじゃない?
牧場を見渡しても 牛の姿は見えず。
吾亦紅が咲き、高原は早くも秋の気配を漂わせている。
岡谷から高速に乗って入った駒ヶ根のホテルの窓からは、明日登る山の辺りにかかる雲が赤く染まっているが 山の天気じゃ定評のある天気とくらす 通称テンクラを見ると 明日行こうとしてる濁沢、檜尾方面は昼まで最悪のC評価でその後B。いっそ一日ずらそうかとも考えたが この夕焼けだし半日も経てば予報だっていいほうに変わることがあるんじゃないかという いつもながらの楽観主義。
まだ暗いうちに起き出しカーテンを空けると山の上に雲はなく星が瞬いてる。ヨシ、行くぞ!
セブンでオニギリと飲み物を調達し、菅の平一番の5時の臨時バスに乗り、ロープウエーから反対方向を見ると台形の富士山の頭も顔を覗かせて絶好の登山日和やないか。
ロープウエー駅の 気温は16.5度。Tシャツの上に長そでを着込み、
定番の場所で、去年岩の上でポーズをとった宝剣を見上げ 今日はその反対側探索。
極楽平方面は ほとんど人がいず、
さっそく現れる高山植物を愛でながら ↑カラマツソウ 絶好調に登る。
クロユリは花が終わった?
ゴゼンタチバナ。モンベルで買ったこの花のイラストが入ったTシャツをナニが着ている。
まだ産毛になったばかりのチングルマも風になびいて 今日来て大正解やが。
極楽平の標識が見えた。一昨年のまだ雪のあるゴールデンウイークにここまで6本爪のアイゼンで登ろうとして山岳隊の人に「前とかかとに爪のある12本のアイゼンでなきゃ死にに行くようなもんだ」と言われ、一旦戻りバスセンターの前にあった登山用具屋でレンタルして翌日再挑戦したことがあったな。
初めて踏み出す 檜尾、空木方面。しかしなんだこの風?
さえぎるものがないからスゲぇ風がビュンビュン吹いてしかも寒い。リュックから念のためにと持って来たダウンのベストを着用、このまえの谷川岳のときは無用の長物だったけど役に立ってよかった。強風にゴルフ帽が風に飛ばされないよう、ウシロの金具をこれでもかと固く締めてダイジョウブだな。
このあたりの固有種のコマウスユキソウ。
タカネツメクサ。
去年、宝剣をやっつけてから登った三ノ沢岳。 花の百名山だが極楽平を下ってる時 ロープウエーの最終は5時ですというアナウンスが聞こえてきて焦った。今日は二の舞をしないように 濁沢くらいで引き返そう。
大トカゲの頭みたいな岩。なんか名前がついてるんだろうか。
左手を見ると 南アルプスのオールスターが勢ぞろいし、その向こうにはデンと富士山がそびえてる。
来た道を振り返れば、とんがった宝剣、その左奥の雲がかかってる辺りが駒ケ岳。
島田娘の頭を過ぎ、このあたりから 檜尾や遠く空木が眺められるということだったが あいにく湧いてきた雲の中、出合ったオジサンにカメラを渡して一枚撮ってもらったが着膨れ、というかデブだな。
右手方向からは風がビュンビュン吹きガスが盛んに流れている。
左目の奥の頭の中が痛い。朝からなにも食べてないからかと 風裏の岩の陰に腰を下ろして鮭とイクラのオニギリをパクリ。身体が冷えちゃいけないと 手袋をし、レインウエアの上だけ着て重い腰を上げ歩き出すが 頭痛は一向におさまらず、それどころか胸がむかついてきて これ、高山病の症状?
そのうち行く手全体がガスの中。風はますます強まり「テンクラ」の言う通りじゃないか。
キモチ悪りィ。ここで吐いて 山を汚したって後々まで汚名を着るか。それでも帰りのバスの中で吐くよりはマシかとかつまんないことを考えても 足が動かなくなってきた。なんか酸素が身体に廻ってない感じだな。あ~早く降りて温泉に入りたいな~。
こんな短い階段を上がっても息が上がり また岩陰にゴロリ。
手足を投げ出して どうしよう。これじゃ濁沢までだってムリっだぞ。
その時、ふっと頭を締め付けていた帽子の金具を緩めたら 血のめぐりが良くなった?なんか身体がラクになって原因はこれか! まるでソンゴクウだな。それでも身体が戻るまでヨコになっていようと岩陰に足を放り出して目を閉じてたら上のほうでなにやら物音がして人の気配。それが静かになり目を開けたら心配そうに覗き込む若い男の人の顔、「ダイジョブですか?」
いやいやすみません。ちょっと眠くなったから休んでたんです。ご心配かけて・・・とチョッピリ見栄張ったいい訳をして 行くか!ゆるい帽子の上に雨具のフードをかぶり ムカムカも収まってやっとの思いで着いた濁沢大峰だったが
なんだよ、名前のところがないじゃないか!
濁沢大峰 標高2724m。
極楽平より30m高いだけだが、ここまで相当アップダウンを繰り返してきたから、帰りも同じことの繰り返しだ。
だが気分も良くなり、吹き付ける風も心地よい?湿り気を帯びた風を胸一杯に吸い込み、世俗に汚れた息を吐き出す、ついでにコロナも飛んでけ~。
つめくさの中に咲くチシマギキョウ。
キバナシャクナゲも間に合ったけど、ついに風が雨まじりになって上はハナからカッパを着てるがいまさらリュックを下ろして下のカッパを着込む気力はなく 左手から吹き付ける雨風に 防水されてるズボンも左側だけがビショ濡れでパンツまでしみだした。
サイゴにすれ違った女性、この天気の中を空木まで行くという、気をつけて・・・
ガスが途切れた瞬間、うしろを振り返って。
ギョッ。ネコが立って拝んでる?
ほうほうのテイで極楽平まで戻ってきて一安心。
風の音を聞いてよ。↓
https://www.youtube.com/watch?v=dKszhQTqmkM
チングルマの綿毛も雨風に吹かれ
お~、ロープウエーの小屋が見えた。
確か1時の下りに乗ったから6時間がかり。コースタイムを大幅にオーバーしてる。
帰りのロープウエーの床に置かれてた大量の重りは風対策だと。
200円の割引券をもらってコブシの湯に浸かり、
駒ヶ根SAで名物 牛筋ローメン焼きソバ。酢がオススメと小皿に用意してくれたけど 疲れた胃にはもうひとつだった。
そうして 今回の第一目的の故郷の墓にみんな元気でやってるとお参りを済ませ、小学4年の冬まで学んだ小学校の跡地に立てば、うしろの大ケヤキはなんとなく見覚えがある、と言うことは ここは校庭のすみっこだったところか?なにしろ60年以上前のハナシだからな~。
飯田駅舎はリンゴをかたどって新しくなっているが、この跨線橋は昔のままだ。左奥に見える風越山に3年前に登ったのが登山のハジマリ。近くのホテルにもう一泊し、来年までさらばとふるさとをあとにしたのでありました。