
小さい頃お婆さんに聞いた話じゃ、いくつも山を越えた奥のまた山奥のほうに遠山というところがあって
そこの衆はクマやイノシシを獲って暮らしてるんだに・・・
遠山と言う名前ピッタリのイメージは、印象深く記憶に残ったが そこに隕石クレーターが発見されたとあっちゃ
墓参りのついでに、是非訪れてみたいと・・・
あわよくば、一個も見つかってないという隕石も探し出すぞ!
お婆さんの話は60年以上前のもの、今はきっと道路も整備され さっと行けると思い
駒ヶ根の日帰り温泉を1時半出発。
中央道を飯田インター、ナビ通りに進むと、こんな山の中に似つかわしくないループ橋が現れた。
そこをグルグル上がれば、高速かと思えるようなリッパな道路と長いトンネル、
2時か、これならあっと言う間に着くだろと思ったが・・・

しらびそ高原まであと15km、ここからが凄かった。
クネクネ細い一本道、対向車がきたらぜったいにすれ違えないような細い道をカーブミラーを頼りに
右に左にハンドル切ってゴーカート状態で行くが、ホントにこの道でいいのか?
向こうから一台も来ないじゃないか。

ナビを見ても、まだこの先クネクネが相当続くな。
もういい加減にしてくれと思った頃、

やっとシラビソ峠というところに到着。
天気がよければ、眼前に南アルプスが見渡せるんだろうが。

そこからすぐのところに・・・ココか その昔 2万年前に隕石が落ちたというところは。
御池山までは その円周をグルッと廻るんだな。

まあ、見渡しても へ~~~と思うだけで ここがクレーターと言われなきゃ まったくわからない。

只今3時ちょっと過ぎ、御池山の頂上まで40分くらい なんといっても登山道じゃなく遊歩道だからな。

えっ、いるの?
お婆さんが言ってた通りだな。
エッと、クマに会ったときはどうするんだっけ?
相手の目をじっとみて威厳を持って対峙するんだったかな、疲れて忘れちゃったよ。

大体最初の予定じゃ今日(月曜)ここに来て 明日の火曜に宝剣に登って帰るつもりだった。
それがどうみても火曜は雨。
え~いしょうがねぇと 田中陽気並みに一日二峰、
しかし 一日で宝剣と御池山に登るヤツは他にはいないだろうなぁ。

熊笹の茂る道を ずんずん 筋肉痛がむしろ心地よい。

3時を過ぎていて、こんな時間にこんなところを歩いてるのは他にいない。
出るのはクマさんか宇宙人か・・・

この左側がクレーター?
なんつっても2万年前の話じゃ そうなの?と言うしかない。

この丸太が濡れていて滑るんだよ。危うく尻餅を突きそうになった。
ヨコに渡してある板の上を踏んで 慎重に通過。

宝剣の高山植物とは違い、木に覆われたここの道はキノコがニョキニョキ。

ここにも・・・ナメコ?

3時50分、着いた。
前に見えるところがクレーターのフチだとか・・・
木のないところの反対側に落ちた?逆のようにも思えるけど二万年経ってる話だからな。

サッ、目的はすべて果たした。帰ろう。
夕陽が差し込んで、ウグイスの声が聞こえる静かな道を 一人っきりか クマさんでも出てこないかな。
もっとも 時々ウシロを振り返って 宇宙人があとをついてきてないか用心しながら。

しかし突然大きな音がして 空から隕石が降ってきたんじゃクマも驚いただろうな。
2万年前はクマはいないか?

16時半、人っ子一人いないクルマを止めといたところに戻ればこんな看板。

さ、どうする。もう遅いしこのまま帰ってもよいが この先に「日本のチロル」と呼ばれる下栗の里がある。
10kmぐらいのもん、どうせならそこ寄って・・・

ナビを見れば地形が看板そっくり、確かにここを隕石クレーターだと発見した先生の言う通りに
月のクレーターに見えなくもない。

途中にこんな看板、この岩がモロに隕石にぶつかった?

それから、なるほどこれじゃ観光バスが入って来れないというわけだというようなクネクネ道を又行き、

下栗の里の全容が見渡せるというビューポイント。

整備された林道を歩いて20分。
このくらいならとストックを持たずに来たけど、駐車場からの登りでバテ、入り口のところにあった竹杖を借用。

お~、写真で見たのと同じ光景。まさに天空の里!
日本の原風景と言われる、南アルプスから延びる険しい尾根を切り開いた「下栗の里」が目の前に・・・

観光地というより、今も人々が生活しているところ 募金をしたけど、
こんな山奥で・・・どこにも書いてないけど やっぱり 平家の落ち武者の末裔?

飯田のホテルに7時過ぎになると電話をし、屋根を開け写真に見えた下栗の里の曲がり道をゆっくり行けば
農作業を終えたおばあちゃんが 振り向いて 「気をつけてお帰りなさい」
「はい!」

暮れかかった遠くの高い山が、同じ高さに見える遠山郷・・・

飯田市内に戻ると、オレが登山を始めるきっかけとなった風越山が見え、
オープン屋根の上を見上げれば、

アッ、流れ星!

マゴたちへのおみやげに 宝剣の頂上直下の花崗岩?と
隕石・・・