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選考委員の北方謙三が 「二十年に一度の傑作」と言い

伊集院静が 「これほど幸せな読書は何年ぶりだ?」

林真理子は 「これぞエンタメ作品、十五年間で一番幸せな選考会でした」



べた褒めの帯のかかった 今年の直木賞受賞作 東山彰良の「流」、

カマキリやクリームパンより確実だろうと、@1600円。




プロローグからイッキに物語りに引き込まれた。

中国大陸の荒涼とした、かってこの場所に集落があったとは到底思えない場所に建つ

黒曜石の石碑に刻まれていたのは  



1943年9月29日、匪賊葉尊麟は此の地にて無辜の民56名を惨殺せり。
内訳は男31人、女25人。もっとも被害甚大だったのは沙河庄でーー(数行に渡って判読不能)
ーーうち18人が殺され、村長王克強一家は皆殺しの憂き目を見た。
以後本件は沙河庄惨案と呼ばれるに至る。



碑文を写真に撮った主人公は急に便意を催し、乗ってきたタクシーの運転手にトイレのありかを聞けば

建物の残骸の壁を指差されるが選択の余地はない。東京駅でもらった消費者金融のポケットティッシュを

握り締めてしゃがんでいると、壁の上から人民帽をかぶり白い山羊鬚を生やした老人が

「なにしとるんだ?」 尻丸出しでトイレ以外のなにものでもないところにヘンな質問をされ便意はふっとんでし

まったが、その年寄りが 重ねて 「さっきあの石碑のところでなにをしとったんだ?」



主人公は父に決して山東省には近づいてはいけない、ときつく釘を刺されていた。

おまえのじいさんはあそこでたくさんの人を殺しているんだぞ、

その人たちの家族がまだたくさん生きているんだ、おまえが葉尊麟の孫だと知れたらどうなると思う?



主人公は用心深く口をつぐんだ。

「ひょっとすると、あんた・・・」 老人の目が鋭く光った。

「葉尊麟のムスコかね?」





とっつきにくい中国名の登場人物も最初のページに説明があり、なんどもそこに戻っては

台湾を舞台にした、青春物語と活劇とサスペンスとがごちゃまぜになったストーリーに

うまい日本語のいいまわしなどあちこちにあり、この作者何人?と奥付けを見返したりしながら



とにかく夜は目が利かなくなって、蛍光灯の下では疲れる。

途中まで読んでいたのを、今日の雨にこれさいわいと、途中から一気呵成に読み終わった。




言っちゃなんだが、例の「火花」よりは数倍おもしろかったな。

まあ、直木賞と芥川賞を比べるなっていうハナシだが、同じ若者が主人公でも

平和な世の中にどっぷり浸かりチマチマ悩んでる日本の若者と、兵役があり

いつ海峡を越えてテキが攻め込んでくるかという緊張下で暮らしてる違いが骨太のストーリーになって

おもしろく読めたのも、手首痛のおかげ?



「いつからゴルフするの?」

家にいてナニに迷惑がられても、たまにゃ読書の秋のまねごともせにゃな。



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← 午後から陽が射し、花壇もやっつけでいろいろ植えた。


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