
月例の、スタート前の点呼とボール確認。
「**としかずさん・・・」
「としいち です!」
「え~、リイチじゃないの?」
ヨコからチャチャ入れて、緊張感のカケラもない。
利一と書いてトシイチ?
「リーチイッパツ、尾てい骨骨折なら、ドラがなくても満貫あるぞ」
3番のショートで8打って、「バカ言ってるからですよ」
そうじゃない、オマエのことがシンパイで集中できねぇんだ。
ティーショットを山越えて隣ホールに打ち込み、キャディーさんと旅に出たまま
グリーンで再会するまで、無事生きてるか戻ってこられるか心配のし通しだから・・・
「ウソばっかり」
しかしオレも8打ったら、関東地方じゃ大したことなかった台風8号で倒れた
ウチのひまわりみたいにクシュンとなって、意気地なし。
今日のニュースでは、故郷の信州の山一つ隔てたところの南木曽村、
あの台風の直撃を受けた村の被害地の真ん中に、一本のアンズの木が無傷のまま残って
青々と葉を繁らせ 「奇跡のアンズ」と呼ばれてるそうだ。
「家を取り壊した庭の中に、白い花をつけた杏の樹がただ一本立っている。」
来春には、横光利一の”旅愁”の書き出しの一説のような光景が見られるだろうか。
←横光はリイチさんだけどな。