
ちょっと前のニュースだが、リニアモーターの新幹線が
故郷の信州飯田を通るルートに決まり、もし新駅ができたら
東京から20分で行けるという。 20分かァ・・・
小学校4年の時に東京に出てきて以来、毎年の夏休みには
母に連れられて、飯田郊外にある母の実家に帰省した。
中央本線はまだ電化されておらず、大きな車輪の蒸気機関車の時代。
新宿を出てしばらくすると、トンネルばかりの山の中にさしかかる。
トンネルに入るのを知らせる汽笛が、ボ~~~っと鳴ると
向かい合わせの人と、チカラを合わせて窓を下ろす。
開けたままにしておくと、機関車の煙や石炭の燃えカスが車内に入ってきて顔がススけるのだ。
閉め切った暑い車内で、じっと外が明るくなるのを待ち、
トンネルを抜けると、それっと窓を開けたもんだ。
閉めて、開けてを何回か繰り返したころ、だだっ広い構内を持つ駅に止まった。
線路は一本しかなく、向こうから来る列車が通りすぎるまでのんびり待っている。
線路脇にはえてる夏草が揺れるのを、ぼんやりながめているとやがて
ガタンと動きだした汽車は反対方向に向かって走り出した。
「アレぇ、戻っちゃうんじゃない?」 不安げなボク達に、前のおじさんが
これはスイッチバックと言って、急勾配を登るため一旦うしろに戻り
勢いをつけて上がってく方法だと教えてくれた。
それからやっと辰野駅に着いて、天竜川に沿って走る飯田線に乗り換える。
6時間も7時間もかかって、見覚えのある山や川が見えてくると
ふるさとの駅も近いと、胸の鼓動も高鳴ったものだ。
20分じゃ、そんなヒマもねぇな。
しかも20年後にできるんじゃ、生きてるかどうかもわかったもんじゃない。
イナカのお祖父さんが、酔っ払うとよく歌ってた「ひえつき節」
その、庭のさんしゅう~の~木に赤い実がなった。