元禄二年、弥生も末の七日というから
旧暦の三月二十七日、今の暦でいうと五月十六日に
芭蕉は「奥の細道」の旅に出た。
その旅立ちの折の句である。
「月日は百代の過客にして、行きかう年も旅人なり。
船の上に生涯を浮かべ、馬の口とらへて老いを迎える者は
日々旅にして、旅を棲家とす。 古人も多く旅に死せるあり。
予もいずれの年よりか、片雲の風に誘われて、漂泊の思いやまず・・・」
この有名な書き出しにも、ちょっと魅かれるものがある。
いずれにしても、この時季になると、
バカの一つ覚えで空を見上げ、流れる雲を見ながら
冒頭の句をつぶやくのだ。
ネモフィラが風に揺れている。