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竹さん、87歳。
オレ達より随分と年上だが、皆、親しみを込め、苗字の一字をとってこう呼ぶ。

昔、S和会というゴルフの集まりがあり、その頃でも会の中では一、二を争う年寄だった。
口の悪い連中が
「まあ、順番から言ってもこの中で最初に逝くのは竹さんだな」
「その時は○○さんが葬儀委員長で、××さんが友人代表だ」
「竹さんはゴルフはへただったけど、いい人でした・・・」

ちょっと転んでも骨折をし、ガンだといって入院を繰り返していた。
だが、そう言っていた竹さんの悪友達が、オレからみれば大先輩達だが、
次々と亡くなっていくのに、竹さんはシブトク生き残っている。

小さな出版社をやっていたが引退し、今は「囲碁」に凝っている。
だが、その碁はゴルフ以上に大ヘボ。
S和会のメンバーが皆、年をとり、ゴルフから碁の会に重点を移した時、
自分もやりたいと、六十の手習いで始めたのだ。

月例でやっている囲碁会の勝率も、谷繁の打率以下だが、大風呂敷を広げた碁で、
上手もたまに、これに引っかかって負ける。竹さんに負けると、その月の優勝は難しい。

竹さんに孫が生まれた時には「銀河」、その次の孫に「宇宙」と名づけて悦に入っていた。
そんな名前をつけちゃっていいのかと心配したが、その孫達もとっくに成人している。

まだバリバリだった頃、銀座のスミっこにあったバーで、
ショットグラスの酒をカパッ、カパッとアオりながら
「これはノルマンディーのカルヴァドスという港町のリンゴから作った酒だ」
と能書きを垂れながら酔っ払っていたが、今は酒もやめて
「長生きも芸のうちだ」
とうそぶいている。
ふざけた話ばかりしているようで、中身はちょっとインテリのところがあり、
オレたちはそこが好きなんだな。

来年、正月が過ぎたら丹沢のふもとにある旅館で、
囲碁を兼ねた”米寿”のお祝いの会を予定しているのだが
それまでは生きていて欲しいというのが、我々の願いだ。