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伊豆、沼津近辺ではこの夏、どこも目立った釣果が聞こえてこない。
大型の台風が接岸しないからだとか、海水温が例年より低いからとか言われている。
オレ達、釣りバカ親子でも、こんなに釣れないんじゃ、わざわざ沼津まで釣行しようという意欲もそがれる。

そんなオレ達でも一度だけ、夢のような入れ食い、爆釣を経験したことがある。

一昨年の秋になりかけの頃、釣りに行きたくてウズウズしていたが、その週末は台風が接近中ということでアキラメムードだった。ところがこの台風の速度が以外と速く、今夜中には抜けそうという予報にソレッと早朝に出立。東名を降り、まだ薄暗い海岸線を伊豆方面に走っていると、道路に赤ランプがクルクル廻っていて、通行止め。台風が連れてきた大雨のせいでガケが崩れ通れないのだという。

勿論、ここまで来て帰れるわけがない。ユーターンし、伊豆の山の中をグルッと廻ってがけ崩れをやりすごし、予定の堤防に着いた。大変、人気のある堤防でいつもなら、たくさんの釣り人で賑わうところだが、今日は一人もいない。
「普通はがけ崩れのとこで帰るよな、ばかダネ」
と自嘲しながら大回りしたせいで、もう9時を過ぎていたが、やっとサオを出す。

海は台風の影響で茶色く濁っている。台風も完全には抜け切っておらず、空はなまり色、だが波も風も大したことはない。
一投目、ダンゴが割れてウキが上がってきた瞬間、ズボッと消しこむ。
オッツ~と合わせるが、空振り、そのあおった仕掛けが頭上の電線にクルクル巻きついた。
堤防の先端にある灯台まで電線が走っていた。

「ちくしょ~」
と唸ってる横で子供にもきた。マダイだ。
「丁度、時合いダ~!」
とか言って喜んでいる。
オレが仕掛けをとろうとアセッているのを横目にまたサオが曲がっている。
「オイ!なんだよ。オレにも釣らせろ!ばかやろ!」
仕掛けを引きちぎって作り直している最中にも、子供のサオは入れ食い状態だ。

「なんだ?これ脱走マダイじゃないか?天然じゃないぞ!」
「どうして?」
「みんなサイズが同じだよ!昨日の台風でイケスが壊れて逃げ出したんだぞ!」

なるほど、皆40センチぐらいの食べごろサイズ。
脱走でもなんでもいいからと、やっと仕掛けを作り直してサオを出すと釣れる、釣れる。
ダンゴを放り込めば、ウキが浮いてこない。ヘッっと思ってサオを上げれば魚が付いている。
夢にまで見た入れ食いとはこのことかと、釣れるたびに、笑いが止まらない。

一時間半ほどで、二人で25匹。釣堀でサオを出してもこんなには釣れないだろうというくらい釣れた。
この頃になってやっとポツポツと釣り人が現れたが、もうその時には嵐のような爆釣は終わり群れが去ったあと。
クーラーボックス一杯のマダイを見て皆、驚いたり、悔しがったり。

イケスの漁師さんのことを思うと少し胸が痛んだが、それでも大満足で、付け餌も切れたからと、昼前にゆうゆうと帰途についた。
友人にも電話して、高速の出口で待ち合わせて、おすそ分け。
友人には脱走のことは内緒にしておいた。
腐ってもタイというぐらいで、うまかったな~。

オレ達バカ親子は毎年、でかい台風が早くこっちにもこいと待ち焦がれているのである。