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火付け盗賊改め方の長谷川平蔵がいつものように、両国橋のたもとを歩いておりますと、一日の商いを終えたであろう車屋が、足早に平蔵の脇を通り抜ける。
向かい側から水商売らしき一人の女。この二人が橋の上ですれ違うというその時、車屋の身体が前のめりに崩れ落ちる。

「もし、車屋さん、怪我はなくて?」
「へえ、お蔭様で。」
と、その時、暮れ六つの鐘が・・・ゴ~~ン・・・

江戸の町に夕闇が迫る頃、いつもの市中見廻りを終えた火付け盗賊改め方の長谷川平蔵が、外神田のある普請場で立ち話をしている二人の怪しい職人の姿を見た。

「おい、おめえさ、ここで殺しがあったの知ってるか?」
「ああ、知ってるよ、それがどうしたんだ?」
「実はな、下手人を見た奴を知ってるんだ」
「ええ~、誰が見たんだ?」
「そこのな、団子屋だ。団子屋が、みたらし~」

文章にしちゃったんじゃ、面白みの半分も伝わらない。
柳家紫文が絶妙の間と、不思議な声と絶品の三味線にのせて語るのを聞けば、たちまち鬼平犯科帳の世界だ。