天気予報びったし。フォー!
朝、目覚めると障子の外がほの明るい。「まさか?」と思って開けると一面の銀世界。今日のゴルフを中止にしておいて大正解。ということで、昔話を一つ。

もう30年近く前、オレが28,9歳のころのことだ。昨日も書いたが、当時、S和会という20人ばかりのゴルフの集まりがあって、小金井とか我孫子、相模原といったいわゆる名門コースといわれるところでコンペをおこなっていた。そのメンバー中にY田さんという何代か前のレコード大賞の審査委員長をしていた人が長老格でいらした。熱海ブルースを作曲した方で、ゴルフも円熟の技でこなされていた。

その時は相模原でコンペだったが、朝、練習場へ行くと、Y田さんが一人で練習をしていた。Y田さんはここの理事長もされていて、当時も、もうかなりのお歳だったと思うが、いい音をさせて、180-190ヤードくらいのドライバーをコンスタントに打っておられた。しばらくうしろに並んで打ちながら、時々先生のショットをみるのだが、どうも構え方が普通の人と違う気がする。
「先生、その右足の向きは、わざとそうしているんですか?」
そのころ、構えた足先は逆ハの字が常識だったが、先生の右足のつま先は飛球線方向に10度ぐらい
中に入っていた。
「そうそう、よく気がついたね。これは21世紀打法っていって、イギリスの物理学者考案して本をだしたものを僕の友人の高田市太郎が訳したんだ。左指の握りもフォーナックルって言って、上から見るとこぶしの関節が4っつ見えるんですよ。」
と握りを見せながら丁寧に解説してくれた。今度は前に廻って見るとまるで横なぐりに打つような構えで、シャフトと平行に左親指を構えるのが普通だったあの頃、凄く革命的に見えた。
「こうすると、年寄りでも良く飛ぶんですよ。」


オレは早速、その本を買って練習をした。ミンディーブレイクという物理学者は”やり投げ”の選手でもあって、なるほどと思うような構えなのだが、最初のうちはひっかけばかりでて、なかなか自分のものにできなかった。が、時々、びっくりするくらいの凄い球がでた。

それから10年ぐらいたったあるコースの月例でのこと、同じ構えで打ってる奴がいた。
「それ、21世紀打法ですか?」
そうだという。やはり、あの本を読んではじめたんだが、習得するには時間がかかりそうだと、オレと同じ感想をもらした。
「早くしないと、21世紀になっちゃうね」


そして、21世紀にはいって大分過ぎた今は、左をかぶせて握るのが当たり前になってきている。また、右足の向きもだんだん内向きになってきている。30年も前に今様の、21世紀打法を身につけていたY田さんはすごかったし、オレはやっと、その入り口にたどりついたかなと思える今日このごろである。

あの頃、レコード大賞は、五木ひろし、森進一、布施明、都はるみときていた。
「先生、今年は誰がとりそうなんですか?」
と、暮れも近くなった時のコンペでオレが聞いた時、
「今年はジュリーがよさそうだね」
と言った。80歳近い人がカタカナの名前を口にした驚きと、まだまだ演歌全盛期だったあの頃のこと、半信半疑で聞いていたのだが、大晦日のテレビは、まさに予報的中、Y田先生の白髪の姿とともに、沢田研二が栄冠に輝いている姿をうつしていた。