パットの名人

おもしろエピその３、Ｔ島のこと。

Ｔ島もオレやＪちゃんと同じ団塊世代。小柄な体型のばくち打ちで、あまり飛距離も出ないで嘆いていたのだが、ＤｒをＳナジーに変え、アイアンをＹネックス社製に変えた途端、２クラブは違うようになり、生き返ってしまった。

もともと、パットの名手でテークバックを小さくしてチョーンと強めに打って、ビシバシといれてくる。
つい２年前までは８つもハンデをあげていたのに今では、へたすりゃこっちがハンデをもらうこともある。

そのＴ島だが５５歳で某新聞社をやめ、１年間は失業保険をもらっていた。が、その後も一向に働く気配を見せず、しかし、我々とのゴルフは今までと同じようにつきあっている。
ゴルフのお誘いの電話をかけると、ケータイのうしろで場内アナウンスらしきものが聞こえる。
「どこにいるんだよー？」
と聞けば、
「ボート」
ボートレースで暮らしているのか、いつケータイにかけてもアナウンスが聞こえた。だけど、いくらギャンブラーだからといってトータルでそんなに儲かるわけがない。きっと、隠し財産があるんだろーって皆でウワサをしていた。

そのＴ島がこのあいだ、失業以来３年ぶりに仕事をはじめたんだと。なんでも物流倉庫みたいなところで、台車に積まれた品物を運ぶアルバイトらしい。
「時給７５０円でとてもやってられないよー。疲れるしー、だけどよー、ものは考えよーでお金もらって散歩したり、からだ鍛えていると思やー我慢もできるよなー」
「それで、最近、飛距離がでるよーになったんか？」
と、ハーフタイムの食堂で笑った。

でも、あんまり、疲れるんでバイトの帰りは市川の駅から自宅までタクシーにのるんだと！