【小説】空港にて
- 著者: 村上 龍
- タイトル: 空港にて
休日出勤前の昼食がてら、活字がほしくてぶらついたショッピングモールの書店で衝動買い。
「半島を出よ 」で話題をさらっている村上 龍の短編集である。
実を言うと、「初」村上 龍。
空港や、駅、というのは、希望と哀愁、日常と非日常を同時に感じさせ、ざわざわした大衆の活動感というか、自身とは無関係に行き過ぎていく社会の情景を感じさせる場所でもある。
また中には、何かの決意を秘めて、自分の居場所を求めて旅立っていく人達もいるのだろう。そういった人々の思いが、ざわめきという形になって、渦巻いている気がする。
そういう、どこにでもある日常でありつつも人々の思いが交錯する場所、シーンを切り取っているためか?読んでいて場面の映像、そのときの登場人物の心の揺らぎが伝わってくる。
ご本人が「これまでの作家人生で最高の短編集」とのたまっているように、何とも言えない既視感(déjà vu)と、どこかへ向かっていくキャラ達の「続き感」、果てしなく続く日常に対する焦燥感が良く感じられ、それなりに味わい深いものである。
シーンごとに、味つけも違っていて楽しい。まるでカウンターでゆっくり鮨を楽しんでいるような感覚。
また、短編なので、話がこんがらがることもなく、さっと読み終わるのもよろしい。
昼間のシーンだから、というだけではない透明感を感じさせる「コンビニにて」「公園にて」、が何となく気に入っている。何か強烈な日差しで目の前が真っ白になっていくような、それでいてどこか吹っ切れない倦怠感があるような、いい天気なのにちっとも嬉しくないような、でもいつかは良いことあるような、ないような、そんな感じである。
うーん、上手く表現できない。文で伝えるって、難しいですね!