ペイチェック | 本を片手に街に出よう

ペイチェック


タイトル: ペイチェック 消された記憶

 フィリップ・K・ディック原作。

 主人公は、ライバル企業の技術をコピーして、独自技術を加えコピー以上の製品を作り上げてしまう超天才技術者(ベン・アフレック)。

 彼の仕事は、その性格上、秘密の流出を防ぐために仕事の度に記憶を消される約束になっている。ある時、3年間で報酬9,000万ドルの大仕事を手がけるが、いつも通りに記憶を消された後、報酬を受け取りに行くと、4週間前に本人が報酬を放棄する旨のサインをしていた。代わりに自分あてに20個のガラクタが入った封筒が送られていた…そしてまもなく彼の周りにトラブルがふりかかり始める…

 とまあ文章で書くといかにもディックっぽい出だしの展開である。原作がディック短編である点、そしてまた、映画故に目をひくアクションを入れざるを得なかったところも含めて、トータル・リコール(原作:追憶売ります)にも似た作風である(あくまで雰囲気が、ですが)。

 アメリカの広大な大地でのびのびと育ったようなおっとり型健康優良児的風貌のベン・アフレックが天才技術者ってとこには多少無理はある(何でも当初の配役はマット・デイモンだったとか。それもどうなんだろうか)。

 KILL BILLの印象が強すぎて、「いつポン刀出して暴れるんだ?」という違ったドキドキ感のあるヒロイン、ユマ・サーマンにも無理はある。

 更に、M:I-2バリの安っぽいオートバイチェイスや、もはや執念を感じる白ハトの演出による自虐的パロディーを炸裂させるジョン・ウー監督にも無理はある。
#The Matrix Reloaded の黒ハト(烏か?)はパロディーとして秀逸だったのですが

 というように、無理だらけなのにも関わらず、最後まで一応楽しく観ることが出来たのは、ひとえに20個のアイテムがどう使われるのか?という昔のアドベンチャーゲームノリな謎解き感覚のおかげだろう。

 一見、何に使うの?というアイテムをここぞという場面で活用し切り抜ける展開は、大昔、PCゲームの黎明期にスタークラフトという会社が出していたアドベンチャーゲームシリーズを彷彿させる(大半の人は?な話ですみません。1980年代半ばの話です)。

#スタークラフトのアドベンチャーゲームについて詳しくはここにも紹介が。まだグラフィック(要するに絵ですね)が使われるゲームも珍しかったころの話です…え?絵が出ないと何でゲームが成立するのか?って「字」ですよ。字。だから絵が出るのは画期的だったんですね。ああ…自らオヤジ宣言しているような解説ですね…

#「パイレーツアドベンチャー」とか「ミッションアステロイド」とか、シュールで不思議な魅力がありかなり浸ってプレイした記憶があります。絵もチープだし文字もカタカナ、音も出ませんがそれが逆に想像力を掻き立てるんですよね…

 話を戻すと、結論としては、派手なチェイスは削除して、90分尺にすれば「アイテムの謎解き」が更に際立つとともに中ダレせず傑作になった気がするのだが…今やハリウッドの「ビジネス監督」になってしまったジョン・ウーではそれも無理か。もう少しインディペンデントな監督を抜擢したら、良かったろうな。