【小説】巨人たちの星
著者: ジェイムズ・P・ホーガン, 池 央耿
- タイトル: 巨人たちの星
SF小説の金字塔、巨人シリーズの第3弾。
星を継ぐものやガニメデの優しい巨人が「SFミステリー」的であったのに対して、本作は「SFエンターテイメント」である。
陰謀・謀略あり、破壊工作あり、軍隊動員あり、3部作を通じて初の暴力沙汰(といっても別に人が死んだりはしないけど)あり、の慌しくもキナ臭い展開が中心。
陰謀・工作合戦を主導する地球人と、戸惑いながら追従するガニメアン、という構図はちょっと地球人のことを買いかぶりすぎな感も。我々はそんなに知略的だったっけ?
もともと3部作全体に、科学技術の進歩こそが人類の繁栄をもたらす、だとか人間のあきらめない不屈の闘志に乾杯!的な思想が見え隠れしているが、前作まではダンチェッカー演説に封じ込められていたために感じることの出来た折角の感動的青臭さが、現実世界のごたごたが持ち込まれたことによって、かき消されてしまった。心なしか、ハント=ダンチェッカー両教授の元気が無いのもそのせいか。
うがった見方をすれば、巷の謀略本レベルに近いノリである。「ロスチャイルドやロックフェラーは実は宇宙人だった!」みたいな。
「星を継ぐもの」で強烈に感じた、夜空の星を眺めながら遠い過去からの人類進化の謎に思いを巡らす…感が作を重ねるごとに薄れてしまったようで寂しい。
しかし、とは言えそこは一流のSF作家、見事にSF的スケールで解決。広げた風呂敷をたたむには色々無理もあったが最後は「おお!何てこった!」とまたまた驚かされ一応の完結。いやあ何だかんだでSFの醍醐味は十分味わえた。
え?完結じゃないの?第4弾につづく!