【小説】火車 | 本を片手に街に出よう

【小説】火車

著者: 宮部 みゆき
タイトル: 火車


 読みやすい。結構頁数があるが2日程度で読了。
 借金地獄にはまってしまった人達の悲しく凄惨な生き様を描いた物語だが、自分もAmazon等でポンポン買ってしまう派なので、他人事じゃないな~と痛感。

 登場人物やシーンもまた、その辺にいそうな感じなので更に怖さが倍増。電車の中で読了したのだが、思わず周囲の人達をまじまじと見回してしまった(ちょっと怪しい)。
 それくらい「あなたの隣のキレイなお姉さんももしかして…」という感覚に陥る現実感がある。
 「現在」ではなくて「当時」ここまでえぐる、という目のつけどころに脱帽(92年刊行!)

 キャラが各自それなりにいい味だしてるな~と感じた。
 良~く考えてこの人に言わせたんだな、という印象的なセリフ多数。
 逆に意外性というか、感情の揺れみたいなものが希薄な、説明的会話が多いと感じるかも知れないけど。

 この物語にはそんな無機質的、状況説明的な会話がフィットしている。
 失踪した女性のまさに「人生史」を遡っていく展開や、展開する度に明らかになっていく深層と、この淡々とした語り口が妙に合っていてコワイ。

 ラストシーン(とそこに至る展開)は秀逸。ちょっとドキドキ。終わるタイミングも、凄惨な物語にしてはどこか清涼な、それでいて「追い詰められた人間の怖さ」を震撼させ、かつ「続き感」「このあとどうなるんだろう感」を残す、感慨深く悶々としたラストである。