【小説】ターミナル・エクスペリメント

著者: ロバート・J. ソウヤー, Robert J. Sawyer, 内田 昌之
タイトル: ターミナル・エクスペリメント
主人公が医学生時代に抱えてしまったトラウマから「死の瞬間の明確化」研究に打ち込むようになり、その結果、古今東西の謎「魂」は存在するのか?という問いに対する答えを割と簡単に見つけたあげくに、調子に乗って「死後の魂」を実験的に作り出すべく自分の脳(魂)のコピーを作って遊んでいたら、そいつらが連続殺人を起こしてしまい、酷い目にあわされる…といった自業自得的ストーリー。
微妙に恋愛ものであったりもするし、サスペンス仕立てなところもあるし、SFといってもいろいろなジャンルが適度にミックスされ万人受けする内容である。
死後の自分、不死の自分、普通の自分、これら3つのコピー魂のうち、どれが犯人かは比較的簡単に気づいてしまった。
それぞれについてもしそういう状態になったらどういう考えに至るか、よく考えると確かにそうかな、と思う。
そういう事を考えさせてくれること自体、アイデアとしてとても秀逸。
すなわち、この本は犯人探しを楽しむのではなくて、コピーされた魂のそれぞれの特性から導かれる会話を、もし自身が…だったら…、的な自問自答をしながら楽しむべきなのであろう。
何となく淡白な雰囲気だし、結構俗っぽいところ(ネットニュースなどの小ネタ満載だし)もあるのでさらっと読めちゃうのだけど、あとあとになって、心とは?精神とは?自我とは?という少々哲学的なぐるぐる思考に陥る。
しかし、精神のコピーってギガバイト単位で語られるのか?それはちょっと寂しくないかな?
ノートPCに閉じ込められたりしたら、やだな。