【小説】亡国のイージス | 本を片手に街に出よう

【小説】亡国のイージス





著者: 福井 晴敏

タイトル: 亡国のイージス 上 講談社文庫 ふ 59-2



著者: 福井 晴敏

タイトル: 亡国のイージス 下 講談社文庫 ふ 59-3







 前から気になっていたのだが、ついに読んだ。

 正直、専門用語バリバリできっついのかな~と思っていたら、違った。

 

 人間くさいがエンターテイメント性も極めて高い快作。

 全編通じて、早く先を読みたいと感じさせるのは久々である。



 息子が死んだ、その息子を殺した、妻が別居した、極めつけは父親を殺した、とすねに傷持ちすぎなそれぞれの主要キャラが、イージス艦の内外で北のテロリスト絡みの七転八倒(走ったり捕まったり転んだり爆発したり撃ったり撃たれたり隠れたり)、また極秘開発の大量破壊兵器や日米の陰謀対決まで出てきて、まさに一難去ってまた一難、二転三転の展開。



 しかし、単なるドタバタ、ドンパチだけでなく、それぞれのキャラがいちいち怒ったり泣いたり笑ったり葛藤したりがっくりしたりする。ちゃんとそれぞれの背景があるので、キャラの行動に薄っぺらさを感じさせず、かと言って重たすぎでもない、このバランス感覚が著者の凄いところ。



 一連の著書がものすごい勢いで売れているのも、うなづける。



 2005年夏に映画化するそうだが、まさに映画向き。自衛隊全面協力だそうです。

 皮肉なことに、近年の派兵や憲法論議、更には災害支援によって、自衛隊関係の認知度もだいぶあがってきたことも実現の後押しをしたのではないだろうか?

 なんせイージス艦がないと物語は成立しないし、自衛隊の協力は必須ですね。

 (このタイミングでの映画化自体が、自衛隊美化・右傾化の世論コントロールだったら…というのは陰謀小説の読みすぎかな?)



 ここ近年、ハリウッドはもとより韓国映画などにもかなり押され気味で、邦画景気は下がりっぱなしだけど、今回は元ネタは極上エンターテイメントだし、キャストも豪華だし、映画版も久々に期待できるかな?

 (頼むからへんな端折り方はしないでくれ!)



 終章は出来すぎハッピーエンドだが、1つ1つのシーンが情緒豊かで、結構泣ける。

 特に墓参りのシーンでの宮津夫人と渥美のやりとりは「静」の美しさが上手く表現されていて非常に好き。





P.S.著者様



 ご結婚、おめでとうございます。