どうでもいいことに拘って、「こだわってんのって、そこ!?」と苦笑いされる、自閉あるある。
私は大抵苦笑いされる側だが、トモや旦那に対して苦笑いしている側に立つこともある。
一家揃って、お互いに自分の興味ないことには「そんなにこだわらなくても」と思いながら、みんな本筋じゃない何かに日々こだわり続けている。
こだわって考え込むとき、時間に余裕があれば周囲は苦笑いで済み、急ぎの用事の合間であれば周囲を苛立たせる。
どちらにしても、劣勢なのはこちら側。
劣等意識はこちらが持つべきであり、人の邪魔をしてるのだと申し訳なく思わなくてはならない。
トモや旦那のこだわりに対して、苛立つ自分。
そして、私に対する他者の苛立ちが伝わってきたときに湧き出る劣等意識。
どっちもわかるんで、それはそれで辛い。
細かいこだわりのない
無駄のない思考回路を持つ人が羨ましい。
ーーー
療育先のスタッフと話すとき、「ああ、それって自閉症あるあるなんですよねー」と言われることがよくある。
それは、療育者が毎日仕事で療育的視野をもって試行錯誤してるので、自閉症の診断を受けた者を前にすると、特性へ繋げがちである、とも言えるんだろうけど…。そんなこと思っても言えない。
こちらは自閉症で、あちらは療育者。
療育者は自閉症者を分析し対応を考える立場であって、自閉症のやつから逆に分析されたくないでしょうね。
そこんとこわきまえておかないと。
そうなんですか、これも自閉症あるあるなんですね。
あれも、これも、あんな事象、こんな思考、みんな自閉あるある。
なるほど。
でもさ、そう言われると、内心ちょっと反発心が湧くんだよ。
「なんでもかんでもこっちの特性って。それ言われちゃおしまいよ。ははん」てね。
ーー
ピロは色の名前がわからない。
「これは何色?」と聞かれて、答えられるのは赤のみ。
ちなみに色盲ではなく、色の名前が覚えられないってことのようだ。
ピロの担当スタッフが、
「色に関する課題で、結構この赤と黄色と青のコーンを使ったりするんですよね」
と言いながら、オレンジと青と黄色の小さな三角コーンを持ってこられた。
…へー、このオレンジは、ここでは赤ということになってるのか。
と、若干色の受け取り方に差を感じつつ、まあそんなもんかと聞いていた。
「午前中に来られたお子さんにも使ったんですよ。やっぱり色を教えるっていっても、色の感じ方が人によって違ったりするんですよね。それにすごく色の細かい違いに拘る子もいるんですよ。青を群青色と答えるとか。この前の子は、“この色は何色?”って聞いたら、“オレンジ”って答えたんですよねー。まあ、たしかにそっかー、オレンジかーって思いましたねえ。私に“赤”って固定観念があったってことを思い知らされました」
えーっと…
私もオレンジにしか見えんのですが。
むしろ、これに“赤”という固定観念をもつことの方が難しくないか。
非常に明るい地中海を思わせるがごとき、正真正銘のオレンジ。
その子と私が間違えてるのか?これ赤なのか?
自閉のこだわりが、色の微妙な違いに反応して、私に赤をオレンジと言わせしめているのか…?
…て、いやいやいやいや
微妙じゃねえ、どうひっくり返ってもオレンジ。
それとも、この教材の内容説明に“コーン:赤黄青3色”とでも書いてあったのかしら。
そこに何も疑問持たずに、すんなり赤だと受け入れられるのが健常域なのかしら。
「あー…でも私も、これは何色かと聞かれたら、オレンジって答えると思います」
「…あー…」
スタッフは私が自閉症診断を受けている人間だと知っているので、「やっぱりねー、おまえもか」という表情をしてうっすら微笑んだ。
「まあねえ、大体は、青と黄色とセットで出されたら赤と思うものかなと…」
「そー…ですねえ…。“ここに、赤と、青と、黄色のコーンがあります”という前置きがあって、“これは何色?”と聞かれたら、赤と答えるかもしれません」
「なるほど」
あ、私すでに細かいですか?
もはや、私にコーンの色がどう見えるかなんて、どうでもいい?
療育スタッフよ、そういう生暖かい目で見るな。
自閉が拘って食い下がってるわけじゃないんだ…。
なんていうか、その子の名誉のためというか。
いや、てゆーか、そもそも色に拘ったっていいのだから。
例えば、赤に対して、その子どもが「朱色」とか「金赤」とか「茜色」とか、青に「藍色」「群青色」「浅葱色」「青鈍色」とか、マゼンタ100、イエロー60、ブラック30パーセントとか言ったんであれば、私も「あー、やたら色に対してこだわりの強いお子さんなのだな」と思うだろうけど、見た目がオレンジのものを見て、「すなおに赤と答えない」のをこだわりのように話されても、いまいち自閉のこだわり例としてはわかりづらいっすよ。
つかさ、これを「黄色、青とセットで3色出てきてんだから、普通赤と答えるでしょう」と固定観念もてるの、わりとこだわり強くないか?
まあ、そんなこんなで、色の名前を教えるに関しては、色鉛筆などの“完全にその色の名前にふさわしいもの”を使って、正しく教えるのがいいだろう、ということで話はまとまった。
思い込みって誰にでもあることで、自閉限定の現象ではないんすよね。
あと、頭からつま先に至る隅々まで自閉症じゃなくて、けっこう真っ当な感覚が備わってるとこもありますよ。
