夜も寝ず 安くもあらず 白たへの 衣も脱かじ 直に逢ふまでに 【万葉集 巻十二 2846】
訳)夜も眠れず 心も安まらない (白たへの)衣も脱がずにいよう じかに逢うまでは
いつも楽しみにかよっている万葉集の講座、昨日から、巻十二に入りました。
巻十一から続く恋の歌の巻で、これも、柿本人麻呂歌集からの歌が、まず十首ほどあります。
上の「夜も寝ず~」も、そのうちの一つ。
The東南西北のコンサートのタイトルに、
「楽しみ過ぎて寝られへん」とつけたことがありましたが、あれは、
「明日ピアノの発表会なのに、寝られへん」という、
マイケル・ジャクソンの「Beat It」のPVに、関西弁のセリフを付けた、いわゆる面白ビデオが元。
マイケルが、ベッドに寝転がって「羊が四百何匹…」と数えてるんですが、
バッと起き上がって、「もう、寝られへん、明日ピアノの発表会なのに。おかぁちゃん、寝られんよ、もう、大きい声で言ったった。」とか言うんです。
とっても面白いビデオだったんです。
眠れないことって、ありますよね。
ま、それで、上の「夜も寝ず~」。
恋の歌ですから、状況としては、恋人に会うまで、眠れない、と。
窪田空穂は、この歌について「これは明らかに、旅にいる男の、妻に対する恋情だ」と。
土屋文明は、「愛人を待ちわびる女の歌とみるしかない」と。
斎藤茂吉は、「男の歌、女の歌、どちらかに決めなくてもよい」と。
それぞれに歌人で、感覚で言ってますが、
決めなくてもいい、と茂吉が言ってくれて、助かります。
人麻呂歌集の歌は、全部が人麻呂の作った歌というわけではないし、人麻呂がほかの人の気持ちに立って歌ったりもします。
この歌も、男女どちらの気持ちなのかは、わかりません。
読む人の自由で、自分にあてはめても、いいですね。
以前、松本隆さんが、女性の詞を書くときに、最初は女性の気持ちになって書こうとしたけど、うまくいかず、
男も女も、心で感じることは同じだろうと思ってからは、楽に書けるようになった、と話してくださったことがあります。
松田聖子さんが、テレビのインタビューで、どうして松本さんは、女性の気持ちがわかるんだろうと、いつも不思議だった、と話してたことがありましたが、そういうわけなんですよね。
「赤いスイートピー」で印象的な、
あなたが時計をちらっと見るたび、泣きそうな気持になる、という場面、
確か、松本さんは、別の男の人の立場での場面で、同じようなことを書いておられたと思います。
英語のポップスなども、HeとSheをかえるだけで、男の歌にも女の歌にも、なります。
歌は、そういうものでもあるでしょう。
日本語など、主語がないものも多いですし、まさに、万葉集のこの歌もそう。
それでも、歌ができるんですから、すごいことです。
しかし、この歌、「直」を「Nao」と読むと、急に、YoNaGaのNaoさんが出てくるようで、面白いです。
さ、今日も素敵な一日になりますように。
美しい明日へ心をこめて歌っています。
洋司