子供の頃に、夕方、いつも見ていたテレビ番組は、
「新・八犬伝」。
NHKで、放送していた人形劇。

ちょっと調べてみると、
1973年4月2日~1975年3月28日まで、
全464話だったそう。

僕が小学生の低学年の時のことであった。

楽しみに見たので、ほとんどを見たんじゃないかと、思う。

犬塚信乃、犬田小文吾、など、好きなキャラクターの名前は、
今も覚えている。

一昨年だったか、
尾道に行ってた時に、
その、八犬伝の人形の製作者、辻村寿三郎の、
作品展が、近くで開催されているということで、
両親と伯母と僕とで、見に行ったのであった。

八犬伝のキャラクターらも展示してあって、
あの記憶の中にしか存在しないと思ったものを、
目の前で見ることができて、
さらに、その圧倒的な存在感に、だいぶ感動したのであった。

キャラクターたちが、持っている玉に、
「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」の文字。

挿入歌のメロディーに合わせて、覚えたものであるが、
それから数十年生きていれば、
それらの一つ一つに、出会うことがある。

「仁」は、井上靖の「孔子」で、
「義」は太宰治の「父」で、
というふうに、小説で出会うこともある。

「仁義」として、ある種の映画で出会うこともある。

そのほかの文字にも、
場面場面で、遭遇する。

人形劇を見ていた頃には、さっぱりわからなくても、
このことか、と思いながら、過ごすことが、あるのである。

そのたび、玉を一つずつ入手しながら、
生きているようなものである。

ずいぶん前に、「河童」っていう自作の朗読作品を、
ライブでやり、CDにもなったが、
あの「河童」では、
「尻子玉」を抜かれて人間はふぬけになるのであった。

河童に取られても、また、別のものを、手にして、
復活、というようなこともあるかもしれない。

このお話は、どこまでも、まとまったり、
終わったりすることなく、
続いていくようである。
「因果は巡る糸車、巡り巡って風車」。

長くなったので、「新・八犬伝」風に、
「本日、これまで!」

洋司