陸に生息する巻貝のうち、殻が退化しているもの(ウィキペディアによる)。
名を出すと、たぶん苦手な方もおられると思う。
苦手な方には、本日の作文は、あまりおすすめできない。

夜、ジョギングに出ていると、雨のあとは、
その貝類たちの歩いたあとが、
僕の走っている歩道の赤茶のタイル上、
あちこち、銀に光っている。

お姿を見かけることもある。

人間だって、体のほとんどは水みたいなものであろうから、
たいして違わないような気もするが、それでも、
貝が、陸にあがって生活してるとは、
しかも、殻を失ってでも、陸で生きていこうとは、
どういう覚悟があったのであろうか。

湿ったところに隠れていればいいのに、
歩道に出てきて、歩いていらっしゃる。

水たまりでも見つけたか。

歩道は、水たまりがなるべくできないように、
もしできても、すぐに流れるようにできている。

貝の歩くスピードでは、オアシスにたどり着く前に、
それらは、蜃気楼と消える。

あ、幻であったか、と引き返すときには、もう、
帰れないところまで来ているのであった。

子供の頃、カタツムリをつかまえて、
水槽のようなものの中に入れていておいて、
エサのようなものも、入れて、多少湿らせておいて、
まさか、これなら、逃げまい、と、
僕は、外で遊んだのであったが、
戻ってみると、カタツムリは、どこへか逃げていたのであった。

やはり、そこには、いたくなかったらしい。
エサよりも、湿気よりも、
自由なのだろう。

だから、陸で生きることを選んだのかもしれない。

僕は、それを、研究発表にしたのであった。

カタツムリの研究。

カタツムリをつかまえた。
外でユミコちゃんと遊んでいるすきに、
カタツムリは逃げた。
以上。

洋司