本日は、朝から、
外でなにか、大きな音がしているのである。

大きな機械が動いている音であるが、
なんなのかは、見ていないのでわからない。

道路のアスファルトを、はがしているのかもしれない。

外に出て、見てくれば、わかるのであるが、
見てこないのである。

作業の人の声も、聞こえる。

相当に大きなものが動いている音で、
ついに、ガリン、ガリンと、
周期的な音もしはじめた。

こんなことを、書かなければ、
僕も別に、なんの音かなど、そんなに気にもせず、
ただ、近くで工事してるだけだなぁ、くらいに思うだけあるが、
書くうちに、なんの音なのか、
これが、だんだん重大事に思えてくるのであった。

こうなってくると、外に出て、それを見た場合、
その、感動が違う。

あの、朝から気になっていた音の正体は、
これだったか、と感慨も一入。

人は、自分の知っている範囲でしか、
なかなか、考えられないものである。

僕も、もう、これは、工事の音で、
大きい機械が、アスファルトをはがしているものだ、と、
思い込んでいる。

ほとんど、そうと決め付けている。

こういうのが、時に、危険なのである。

もしも、
5月29日朝の僕のアリバイを証明しなくてはいけなくなったとしたら、
僕は、家にいて、「今日の出来心」の原稿を、書いていた。
外で、アスファルトを削る工事をしていた、と言うかもしれない。

実際は、アスファルトは削られていず、
別の全く違う出来事が起こっていたのかもしれないのである。

僕に、アリバイは、ないのであった。

あぁ、子供の頃に読んだ、「名探偵入門」、だいぶ好きであった。

洋司