昨日、午前は万葉集の講座に。
このところ、ずっと楽しかった巻九の虫麻呂歌集が終わったのであった。

筑波山での歌垣についての、前にも書いた歌も出てきた。

男体山に、雲が立ちのぼって、時雨が降り、びしょ濡れになっても、
帰るものか、と。

この歌の解釈として、

こんなに楽しいのだから、帰るものか、
というものと、

好みの人にまだ会えないのに、帰るものか、
というものが、あるとお聞きし、
どっちらにもとれるようで、ますます面白いことであった。

民謡に、あぶれ男の歌のパターンがあるのだそうで、
この歌も、そういう民謡的なものから来ているのではないか、
といわれているのだとか。

歌垣というのは、たくさんの男女が集まって、
手を取り合い、飲食し、馬に乗ったり歩いたり、
あれこれ、楽しみ憩う会である。
歌を掛け合いながら、好みの相手と一緒になる。
一緒になれる人もいるし、なれない人も、いたようである。

あのこがほしい、花いちもんめ、なんていうのも、
ユーモアも含んだ、男女の歌の掛け合い、と。

「あの娘(こ)がほしい」という歌が、The東南西北にあり、
これは、松本隆さん作詞。
「指に刺さった薔薇の棘 血がにじんでも僕は負けない」と。
これは、あぶれ男のパターンとも読めて、楽しいではないか。

僕は、松浦亜弥さんに、「花いちもんめ」というタイトルで、
詞を書いたことがある。

「もしもあなたが誰かのものになったら 私 悲しいからね」と。
こちら、ユーモアの中にも、本心。

閑話休題。

昨日の講座では、
巻九に入った時に先生がおっしゃった、
この巻の特徴は、という謎賭けへの解答というか、
編集者の意図などについて、感動的なまとめがあり、
外は寒く、空一面厚い雲で、雨など降り、傘をさしていても、
足元など濡れるわけであるが、それでも、
胸熱くなるような楽しさで、帰りの電車に乗ったことであった。

皆さんからのコメント、楽しく拝見しています。
ありがとう。
松本隆さんがKinKi Kidsに書かれた「薄荷キャンディー」。
僕は、この「薄荷キャンディー」のCDのカップリング曲「二つの引力」の詞を、
担当させていただいています。
「黒のこうもりで歩きたい気分 雨に濡れてるスペードのエース」と。
なので、「薄荷キャンディー」も我がことのような愛着があります。

洋司