昨晩、鹿児島から羽田に戻れば、寒いのであった。

飛行機の中では、ぐっすり眠ってしまっていた。

行きの時には、奈良や瀬戸内海を見、
万葉の頃の、船の行き来を思ったことであったが、
帰りは、夢も見なかったのであった。

万葉時代、
天の香具山に登っての、天皇の国見。
遠く、海の向こうまで想像しながら、
広がる国を見下ろされたわけであるが、
その方々でも、見られなかった、空からの眺めであった。

おとぎ話云々の、
昔はとっても食べられないアイスクリームの歌を、
思い出すことである。

飛行機やホテルなどで、なにか読もうと思って持っていったのは、
世阿弥の花伝書であった。
前にも読んだものであるが、
こういう時間のあるときには、いつでも読みたいし、
ちょっと読めば、すぐに良い眠りにいざなってもらえそうであったので。

しかし、花伝書は、まったく開きもせずに、旅は終わったのであった。

洋司