先の尾道で、伯母からもらった本、
「孔子」井上靖著を読んでいるのである。

孔子の弟子みたいな感じの人が、
若い時に接した孔子のことを、
だいぶ年取ってから、
こちらに話して聞かせてくれてる感じの小説である。

孔子が、弟子らに、時々、いいことを言うのである。

仁という字は、人が二人いれば、そこには、
思いやりが必要ということだ、みたいな。

弟子らは、皆、そういう言葉を聞くと、
感動して、少々、お腹が減ってても、元気になるのであった。

で、たまに、ここで、なにか一言ほしい、という場面で、
孔子は、何も言わないことがあるのである。

すると、弟子らは、集まって、
先生は、何もおっしゃらないが、それは、
自分らで考えよ、ということなのであろう、と、
あれこれ、先生が、今、何を伝えようとしているのかを、
一人ずつ、言うのである。

先生は、こういうことをおっしゃりたいに違いない、
と、誰かが言えば、
おぉ、そうだ、そうに違いない、素晴しい、となり、
また、別の意見がでれば、
おぉ、そうとも言える、さすが先生、となり、
実際、先生は、何も言っていないのに、
やっぱり先生は立派だ、ということになるのである。

面白い。

ただ、孔子がこう言った、みたいな読み物を読んでも、
僕など、通り過ぎてしまうものであるが、
こうして、小説になっていると、
どういう場面で、その言葉が言われ、
どういう効果があったのかが、よくわかり、
生きた言葉として、こちらに入ってくる。

やさしくやわらかい言葉遣いで語りかけてくれるので、
僕などにも、読みやすくて、
楽しんでいるのであった。