あの美しい光源氏も、30歳を過ぎると、
まったくもてなくなり、40を過ぎては、
悪役である。

九州に住む、
大夫監(たいふのげん)という大有力者が、
出てくる。
武士である。

強引で、たくましくて、ちょっと単純。
地方武士の世界では、こういう男は、
頼りになる、いい男なのであるが、
女社会である都の貴族の美意識からすれば、
いけない。

マナー知らず、おしゃべり、
やんわり断られても、「全然遠慮はいりませんよ」と、
無神経、無教養でありながら自信過剰、
都への強いコンプレックス。

事情があって、都から九州へ移り住んでいた、
美貌の玉鬘(たまかずら)、
この、大夫監にしつこく付きまとわれ、
たまらず、都の光源氏のところへ、戻るのであるが、
すると、
光源氏が、またイヤなのであった。

大夫監もイヤだが、光源氏もと、
あの、王朝貴族の理想像である光源氏を、
大夫監と同じように、イヤだと、それこそ、
紫式部が、言おうとしたところだろう、と。

大塚ひかり著「源氏の男はみんなサイテー」に、
そのようなことが書かれていて、
楽しく読んでいるところである。

それにしても、この大夫監のマナー知らず云々、
僕は、自分にあてはまるところも、だいぶありそうな気がして、
とっても冷や冷やしたところであった。

洋司