小学生の時に、
自由なテーマで作文を書きなさい、という、
宿題が出たことがあった。

自由と言われても、
テーマがあっても、下手なのに、
どうしたらいいかわからない。

何も書けずに、困っていたところ、
くしゃみが一つ出た。

くしゃみを、テーマに、
作文を書いたのであった。

それがまた、非常に下手な作文であった。

くしゃみは、突然出るから、困るとか、
でも、咳よりは、面白い、とか、
くしゃみをごまかすために、
「はくしょん」と出たあとに、「大魔王ぉ~♪」とつけて、
いかにも、自分は、
当時流行っていた、「ハクション大魔王」のテーマソングを、
鼻歌してるだけなのだ、とよそおう、だとか、

とくに困るのは、食事中のくしゃみである、
などと、非常に深刻ぶった様子で書き、
その場合は、
人に迷惑がかからぬよう、
廊下を走って、窓の外の庭に向かって、
くしゃみをするのだ、
などと、書いたのであった。

食事中に、突然走り出すのも、
だいぶ、迷惑なことである。
しかも、窓に到着する前に、
部屋の中途半端なところで、
例えば、口の中に、ご飯が入っているというのに、
くしゃみが出てしまったら、
もう、「大魔王~」などと、
とぼけている場合でもないように思うのである。

最近、思うことがある。
この、今書いている「今日の出来心」、
これは、毎朝、だいたい8時ぐらいから、取り掛かるが、
これを書こうとするときに、
毎日、くしゃみが一つ出るような気がするのである。

風邪を引いているわけではない。

くしゃみというものは、出る時間が、
あるいは、出る精神状態が、決まっているのではないかと。

その時間と精神状態を、毎朝書き留めて、
折れ線グラフにでも、しようかと考えていたところである。

しかし、くしゃみのことなど、
それ以外の時には、忘れているので、
折れ線グラフ作成には、未だいたっていない。

あの宿題から、三十数年の時が流れたのであるが、
相変わらず、作文は下手で、
作文の前に、くしゃみをしているのであった。

洋司