三崎の方から、お借りしてきた、
椙山良作歌集「ほたるの命」
とっても面白かった。

あとがきで、作者ご自身が、書いておられる、
虚勢を張らず、とか、
単に回想にとどまることなく自然や変わりゆく世界を歌おうとした、とか、
現実に目を注いで、そこに生きる自分の姿を捉え、
自分の内面をよく見つめ、感じたことを平明に詠む、とか、
その通りの、美しい歌集である。

昭和九年に三崎にお生まれの作者は、
現在も、三崎に暮らしておられるそう。

老いてこそ、感じられよう、しみじみとした、味わいで、
ふとした寂しさも、軽みとともに、そこにあって、
僕などにも、よくわかる調子で詠われていて、
大変好きであった。

作品そのものをここに書き写すことはできない、けれど、

チルチルとミチルを演じた二人が、
今、寂れた漁港にいるのである。
二人とも、老いたもんだなぁ。

という感じのものがあったり、

段差のない畳に躓くのが不思議だなぁ、
と思っていたら、ふと、自分の老いというものに気が付いて、
にわかに寂しくなったものだ。

というものがあったり、

コンピューターの占いで、
晩年は幸せでしょう、と出て、
今は晩年なのか、と問うようなものがあったり、

また、戦争の体験からの歌もある。

僕など、いつも、実感を求めて、
あれこれ、書いては消しの毎日である。
虚勢を張らず~の、その感じ、
自分でも、楽しんでみたいのである。

洋司