ガットギター用の僕のレパートリーは、
今、6曲ぐらいしかないのである。

高校生の時に買った、
易しい、クラシックギターの楽譜集を、
10年ちょっと前に、
楽しみで、全21曲だったか、
弾けるようになったのであるが、
その中で、今、楽譜を見ないで弾けるのが、
6曲ぐらい、なのである。

そのクラシック曲集、
クラシックじゃない曲の楽譜も入っている。

映画「ディア・ハンター」のテーマで、
「カヴァティーナ」という曲も、その一つ。
これは、高校生の時に、覚えて、
所属していた、古典ギター部の
発表会で、いつも弾いていたのであった。
それしか、弾けないのであった。

昔、ロンドンの地下鉄の通路で、
これを、すごく上手に弾いている、
おにいさん、を見かけた。
レコードやCDなんかより、上手に聞こえた。

しばらく、聞いていると、
どこから、来たのか、とか、
話しかけられた。

僕も、それを弾ける、とかなんとか、
話したような、話さなかったような。

こんなことを書いていると、
つい、弾きたくなって、
書きかけのまま、6曲、
弾いたところである。

最近は、エレキギターばかり弾いているので、
ガットギターの指盤や生音が、
ものすごく大きく感じる。

というか、手が、とっても小さくなったような感じ。
もともと、手は、とっても小さいのであるが。

ファンクラブの会報の、4コマ漫画に、
主人公が、周波数帯の違う世界に、
入り込んだお話を書いた。

何かに慣れているときに、
ふと、別のことに出会うときの、
違和感というか、それは、面白いものであるが、
やがて、その違和感に慣れてしまうと、
面白いという、あの感じを、
味わえなくなってしまうのが、
おしい、ところである。

洋司